サラリーマンや会社員でも青色申告できる?白色申告との違いは?
副業などで給与以外の収入があるサラリーマンは確定申告が必要です。「できれば青色申告で節税したい」と考える方が多いようです。しかし、青色申告は誰でも選べる方法ではありません。この記事では、青色申告と白色申告の違いや青色申告のメリットと注意点などを、サラリーマンの方向けに解説します。副収入のあるサラリーマンの節税にお役立てください。
サラリーマン(会社員)なら知っておくべき青色申告の正しいルール
確定申告には白色申告と青色申告があり、青色申告なら条件を満たせば最大65万円の特別控除が受けられます。どうせなら節税につながる青色申告がしたいところですが、そのためには条件を満たさなければなりません。まずは自分が青色申告できるのかを確認しましょう。
「副業なら必ず青色申告できる」という考えは大変危険です
青色申告を利用できるのは、下記のどれか1つに該当する所得がある人に限られます。
- 事業所得:農業・商工業・サービス業などの事業による所得
- 不動産所得:アパートやマンションなど不動産の貸し付けによる所得
- 山林所得:所有期間が5年を超える山林の伐採や立木のままの譲渡による所得
確定申告が必要なケースでも、アルバイトの給与所得、投資の運用益による譲渡所得や満期保険金などの一時所得は青色申告の対象にはなりません。クラウドソーシングなど、副業の所得は事業所得ではなく、公的年金と同じ雑所得として扱われるケースがほとんどです。
会社員の方が青色申告65万円の控除を受けるポイント
下記すべてを満たす必要はありませんが、青色申告の特別控除を適用するために必要な要件を解説します。
① 事業所得を税務署へ証明できるか
副業の所得が事業所得と認められるには、独立・継続・反復して行われる仕事で得た所得であることが必要です。つまり、継続的に仕事をして収入を得ていることがポイントになります。単発の仕事やお小遣い稼ぎ程度では青色申告はできません。事業所得に該当するかが判断できない場合、事前に税理士に相談するとよいでしょう。
② 不動産所得が事業的規模だと言えるか
アパートやマンションの家賃収入(不動産所得)があれば、サラリーマンでも青色申告が可能です。ただし、65万円の特別控除を受けるには、賃貸経営が事業的規模である必要があります。事業的規模となる基準は「不動産の賃貸収入がある場合」で解説します。よくわからない場合は自己判断せずに、税理士に相談することをおすすめします。
③ 3/15までに開業届+青色申告承認申請書を提出する
青色申告をするには、以下の手続きが必要です。
- 個人事業の開廃業等届出書(開業届)を開業後1カ月以内に税務署に提出
- 青色申告の承認申請書を申告の対象年の3月15日まで税務署に提出
青色申告の承認申請書は1月16日以降の開業であれば、2カ月以内の提出で青色申告が可能です。ゆえに、開業届と同時に提出するとよいでしょう。ただし、承認申請書が受理されても上述した条件を満たさなければ、青色申告特別控除は認められないことに注意が必要です。
青色申告で65万円控除した後、いつ、どうやって却下される?
青色申告の条件を満たさない方が青色申告特別控除を申請した場合、以下の理由により、却下される可能性があります。
税務署から電話や書類で確認される
申告書が受理されたからといって、青色申告特別控除が認められるとは限りません。確定申告期間中は、申告書の税額計算が合っていれば問題にされず、内容に踏み込まないケースがほとんどです。確定申告期間後に税務署から呼び出しを受け、事業所得として申告したものが雑所得であると指摘される可能性があります。事業所得と認められなければ、修正申告をしなければなりません。雑所得では青色申告特別控除などは適用されないので、税額が大きく増えることになります。
税務調査時に否認される
青色申告をした年に税務署から指摘されず、数年後に税務調査が入るケースもあります。税務調査で申告内容の誤りが発覚すると、過去分に遡って修正申告を行います。修正申告では、本来支払う税額とすでに収めた税額との差額を納めることになります。それ以外に延滞税や過少申告加算税が課せられることに注意が必要です。
青色申告特別控除は給与所得から引けないので要注意!
青色申告特別控除は事業所得・不動産所得・山林所得からしか差し引けません。副業の事業所得が65万円を下回るケースでは、差額を給与所得などから差し引けないことに注意しましょう。
65万円の控除が受けられないケース
サラリーマンや会社員の方が副業で物販をしている事例で試算してみましょう。前提条件は以下のとおりです。
- 給与所得:400万円
- 物販の収入:200万円
- 物販の経費(仕入れなど):150万円
このケースでは、事業所得は50万円(200万円-150万円)です。青色申告特別控除で差し引けるのは50万円までとなり、差額の15万円を給与所得から差し引くことはできません。
サラリーマン(会社員)向け青色申告と白色申告の違い
確定申告の方法には青色申告と白色申告があります。それぞれの違いやメリット・デメリットを解説します。
青色申告 | 白色申告 | |
必要書類 |
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メリット |
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デメリット |
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青色申告するメリットとは
最大65万円の特別控除を受けられる
青色申告の最大のメリットは、最高65万円の青色申告特別控除が受けられることでしょう。特別控除は、事業所得または不動産所得から差し引け、課税所得を抑えて税額を少なくできます。複式簿記で記帳している方の特別控除額は55万円です。さらにe-Taxによる電子申告あるいは電子帳簿保存のいずれかを行うことで、控除額は65万円になります。ただし、単式簿記の記帳や期限後申告では、控除額は10万円になるので注意が必要です。
赤字を最長3年間繰り越せる
収入から経費を差し引いた金額がマイナスの場合、損失分を翌年以降の所得から最長3年間差し引けます。これを、純損失の繰越控除といいます。赤字を翌年以降に繰り越すことで、翌年以降の利益を圧縮し、節税が可能です。繰越控除ができる間は、継続して青色申告の確定申告を行う必要があります。
今年の赤字を前年の黒字と相殺できる
上記と同様に所得がマイナスとなった年に、前年の所得と相殺して所得税を還付できる制度です(純損失の繰り戻し還付)。繰り戻し還付では、前年の税額を計算し直し、既に納付済みの税額が返金されます。繰り戻し還付を受けるには、前年分の確定申告も青色申告であることが必要です。
30万円未満の資産を購入した年に一括して経費にできる
10万円以上の資産は一般的に長期にわたって使用するため、耐用年数に応じて費用計上するルールがあります(減価償却という)。青色申告の場合、1個あたり30万円未満の資産は、取得した年に一括して経費計上が認められています。この少額減価償却資産の特例により、課税所得を抑えることが可能です。ただし、1事業年度あたり300万円が限度となります。
白色申告するメリットとは
青色申告以外の確定申告は白色申告で、事前の届出は必要ありません。
白色申告は青色申告より記帳や申告が簡単です。白色申告の場合、複式簿記でなく、単式簿記による記帳となります。
白色申告でも、事業所得や不動産所得がある方は記帳と帳簿書類の保存が義務付けられています。
【白色申告の帳簿書類の保存期間】
保存が必要なもの | 保存期間 | |
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帳簿 | 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) | 7年 |
業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿) | 5年 | |
書類 | 決算に関して作成した棚卸表その他の書類 | 5年 |
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類 |
青色申告と白色申告で変わる税金の負担額(例)
給与所得が400万円、事業所得が100万円、65万円の青色申告特別控除が適用される人の、青色申告と白色申告の納税額を試算してみましょう。双方の所得税の納税額は以下のとおりで、白色申告の方が19万5,000円多く納税することになります。
青色申告 | 白色申告 | |
給与所得 | 400万円 | 400万円 |
事業所得 | 35万円(100万円-65万円) | 100万円 |
課税所得 | 435万円(400万円+35万円) | 500万円(400万円+100万円) |
所得税額+住民税(10%) | 87万7,500円(44万2,500円+43万5,000円) | 107万2,500円(57万2,500円+50万円) |
サラリーマン向け青色申告の注意点
最後に、サラリーマンや会社員の方が青色申告をする上での注意点を紹介します。
事前に青色申告の届出が必要
白色申告は事前の手続きが不要ですが、青色申告には以下の手続きが必要です。
- 個人事業の開廃業等届出書(開業届)を開業後1カ月以内に税務署に提出(未提出でも罰則なし)
- 青色申告の承認申請書を申告の対象年の3月15日まで務署に提出
青色申告の承認申請書は1月16日以降の開業(事業または不動産の貸し付けを開始)であれば、2カ月以内の提出で青色申告が可能です。ゆえに、開業届と同時に提出するとよいでしょう。開業届と青色申告の承認申請書は国税庁のホームページからダウンロードできます。提出は、税務署に持参の他、郵送も可能です。
不動産の賃貸収入がある場合
賃貸経営による不動産所得がある方は、事業的規模であるか否かで青色申告の内容が変わります。
事業的規模の基準とは
不動産の貸し付けが事業的規模と求められる基準は、以下のとおりです。
⦁ 戸建ての貸家:5棟以上
⦁ アパート・マンションなどの集合住宅:10室以上
事業的規模でなくても受けられる税制優遇
不動産の貸し付けを行っている方は、事業的規模であるか否かにかかわらず、次のような税制優遇が受けられます。
- 青色申告特別控除を最高10万円まで受けられる
- 不動産所得の損失を3年間繰り越して計上できる
- 30万円以下の減価償却資産を全額経費にできる
事業的規模の場合の税制優遇
賃貸経営を事業的規模で行う方は上記に加え、以下のような税制優遇が受けられます。
- 青色申告特別控除を最高65万円まで受けられる
- 不動産の貸し付けに関わる専業従事者(家族)の給与を全額経費にできる
- 貸し倒れた賃料をその年の経費から差し引ける
- 賃貸物件の取り壊し費用の全額を経費にできる
株などの投資をしている場合
サラリーマンや会社員の方が株式やFXなどで副収入を得ている場合、基本的には青色申告できません。株式の配当金は配当所得、売却益は譲渡所得、先物取引・FX・仮想通貨の運用益は雑所得に該当します。青色申告できるのは事業所得・不動産所得・山林所得のみです。株式やFXへの投資が事業的規模であると税務署に認められれば、事業所得として申告できます。ただし、現状は脱サラした専業トレーダーでも認められないケースが多く、投資をしているサラリーマンや会社員の方が青色申告できる可能性は低いといえます。投資で多額の運用益が出ている方は、一度税理士に相談してみるとよいでしょう。
まとめ
政府による「働き方改革」の一環としてサラリーマンの副業が解禁され、副業収入を得る人が増えました。副業収入がわずかであれば、節税のニーズも低いといえます。しかし、副業収入が数百万円単位の人は、かかる税金も高額になります。継続して売上や利益が見込める方は、青色申告について税理士に相談しましょう。