アパート経営の確定申告を自分で行うためのポイント3つと流れを解説

アパートの確定申告はポイントさえ抑えておけば自分でもできます。とはいえ、「確定申告?何となく難しそう…」「間違えて申告したら脱税になるんでしょ?」など、不安を抱えている方も少なくはないでしょう。

本記事では、アパート経営の確定申告を行う際のポイントや、経費として認められるもの、確定申告までの流れを解説します。

アパート経営の確定申告を自分で行うための3つのポイント

アパート経営の確定申告は、最低限のポイントを抑えておけば自分でも可能です。もちろん、税理士に依頼をすることで間違いのない確定申告を行えますが、税理士に支払う費用が発生してしまいます。小規模経営ならば自分で確定申告することを検討してみましょう。

アパート経営の確定申告をする際に抑えておくべきポイントは、以下の3つです。

  • ポイント①:アパート経営によって得られる所得は「不動産所得」である
  • ポイント②:アパートの取得費用は減価償却で計算する
  • ポイント③:経営で赤字が出たときは他の所得との損益通算が可能である

それぞれのポイントについて説明します。

ポイント①:アパート経営による所得は「不動産所得」

アパート経営によって得られた収入(家賃や返済不要な敷金・礼金・保証金等)は、原則としてすべて「不動産所得」として計算します。

「所得」は10種類ある

「所得」とは、所得税額を計算する際の区分をいい、不動産所得を含めて全部で10種類あります。 たとえば、会社員等として給与を得た場合は「給与所得」、退職金を受け取った場合は「退職所得」、事業で収入を得た場合には「事業所得」のように細かく分類されています。

不動産所得は【総収入金額 – 必要経費の合計】で求めます。

たとえば、1年間の家賃収入が100万円で、経費として30万円かかった場合は【100万円 – 30万円 = 70万円】となり、70万円が不動産所得になります。この不動産所得に所得税率をかけて、納める税額を算出します。

アパート経営を行っていると「事業的規模」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。事業的規模とは「事業と認められる程度の規模」を指し、いわゆる「5棟10室基準」で判断されます。一般的に、アパート等なら10室以上、戸建等なら5棟以上であれば事業的規模として認められます。

事業的規模として認められれば、不動産所得の計算について有利な取扱いが受けられる青色申告特別控除が適用できるため、大きな節税効果が見込めます。

アパート経営が順調に進み、一定の戸数がある場合に利用できる制度ですが、「事業的規模」と「事業所得」を混同しないように注意しましょう。事業的規模として認められても、アパート経営によって得られた所得は「事業所得」ではなく、すべて「不動産所得」になります。

ポイント②:アパート取得費用は減価償却費で計算

アパートを購入した代金も当然、必要経費として認められますが、購入した年度で全額を経費にすることはできません。アパートのような資産は、使用できる年数で分割して経費とします。これを減価償却制度といいます。

アパートの構造別に、使用できる年数が法律で定められています。これを法定耐用年数といい、構造別の法定耐用年数は以下のとおりです。

構造法定耐用年数(一般住居用)
木造22年
木骨モルタル造20年
鉄筋コンクリート造
鉄骨鉄筋コンクリート造
47年
レンガ造 石造38年

参考:国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表

たとえば、あなたが2,000万円で新築木骨モルタル造のアパートを購入したとしましょう。木骨モルタル造住宅の耐用年数は20年であるため、1年あたり100万円、20年間で購入代金全額の2,000万円を経費に算入できます。アパートを取得した初年度に2,000万円を経費に算入するのではなく、100万円ずつ20年かけて経費に算入します。これが減価償却制度です。実際に返済したローン等の金額は関係なく、【アパートの購入金額÷法定耐用年数=1年間で経費に算入できる費用】となります。

ポイント③:アパート経営の赤字は損益通算が可能

アパート経営によって赤字を出してしまった場合には、他の所得と損益通算ができます。

損益通算とは?

損益通算とは、不動産所得等で赤字がでた場合に他の所得と合算し、税負担を軽減できる制度です。

たとえば、給与所得で200万円ある方が、不動産所得で100万円の赤字を出してしまった場合、所得を100万円に引き下げられます(200万円 – 赤字分の100万円)。

所得の金額が減ることによって、給与所得に対して源泉徴収された税金の還付を受けられたり、納める税額を下げたりする効果があります。

不動産所得の赤字を損益通算するためは確定申告が必要です。そのため、赤字であることを理由に確定申告をしないと、損をしてしまう可能性があります。

アパート経営が赤字ならば、原則として確定申告をする必要はありませんが、翌期以降に損益通算ができるよう、赤字・黒字関係なく確定申告はしておいたほうが良いでしょう。

アパート経営で経費にできるものは?

アパート経営の確定申告をする際の所得は【不動産収入 – 必要経費】で求めます。では、必要経費として認められるお金にはどのようなものがあるのでしょうか?

【アパート経営に関わる経費の例

  • 納付済の各種税金
  • 減価償却費
  • アパートの修繕費
  • 各種保険料
  • 不動産会社へ支払う管理費
  • 借入金への利子
  • 仲介手数料や広告費
  • 税理士への報酬
  • 不動産投資に関係するセミナーや書籍費用

それぞれ詳しく見ていきましょう。

納付済の各種税金

アパートの所有や取得に関わる税金の一部が経費として認められます。たとえば、固定資産税や登録免許税、不動産取得税を経費に算入できます。なお、納付したものに限られ、まだ納付していない税金は経費にはできません。

また、個人事業としてアパート経営をされている方が納めた個人事業税も経費として算入可能です。一方、住民税や所得税は経費として認められないのでその点は注意してください。

減価償却費

前述の通り、アパートの取得費用は減価償却により経費に算入します。1年間に計上できるのは、アパート取得費用を法定耐用年数で割った金額です。最長で法定耐用年数を迎えるまで毎年、経費として算入できます。

アパートの修繕費

アパートを修繕するために支払った費用はすべてその年度内の経費に算入できます。ただし、アパートの修繕が資本的支出(資産)として判断される場合には、アパートと同じように減価償却が必要なケースがあります。

資本的支出に該当するものとして、たとえば以下のものが挙げられます。

  • 機能を向上させるために行った外壁塗装
  • リフォーム
  • 新たな設備の設置等

資本的支出は「固定資産の価値を高めたり、延長させたりするような修繕、あるいは耐久性を増すと判断されるもの」とされていますが、その判断基準は非常に曖昧です。間違いのない確定申告をするためにも、不安が残るときは税理士に確認・相談をしましょう。
参考:国税庁|資本的支出と修繕費

各種保険料

アパート経営に関わる火災保険や地震保険料、賠償責任保険等のうち、実際に支払った費用をその年度の経費に算入できます。ただし、保険料を複数年分まとめて支払った場合には、原則としてその年度に該当する金額のみを経費に算入します。

たとえば、火災保険料2年分10万円を一括で支払った場合、1年目と2年目でそれぞれ5万円を経費に算入します。

不動産会社へ支払う管理費

不動産会社等にアパートの管理を委託し管理費を支払った場合、その委託費用を経費に算入できます。その他、アパートを取得する際に支払った仲介手数料等もすべて必要経費として認められます。

借入金の利子

不動産投資ローン等の借入金に対する利子もすべて経費に算入できます。なお、不動産投資ローンの返済で経費にできるのは「利子のみ」です。前述したとおり、元金部分は支払った年に全額を経費に算入せず、減価償却で計算するので注意してください。

仲介手数料や入居者募集の広告宣伝費

入居者を仲介してもらった際に支払う手数料や、入居者を募集する際に支払った広告費等も経費に算入できます。

不動産会社に支払ったお金だけではなく、自分で作成した入居者募集のチラシ代や印刷代等もすべて経費として認められます。細かい部分ですが、ちりも積もれば山となり節税効果が期待できるでしょう。

税理士の報酬

節税に関する相談や確定申告の代行費用等、税理士に支払うコンサルティング代や相談料もすべて経費として認められます。細かい部分でいえば、電話で税務相談をするために支払った電話代や税理士事務所を訪問した際の交通費等も経費に算入できます。

不動産投資に関するセミナー代や書籍代

アパート経営を成功させるための知識を得るために参加したセミナー代や書籍代等もすべて経費として認められます。

また、セミナーに参加するためにかかった交通費や宿泊代も経費に算入できます。タクシー代や宿泊代等は領収書をもらっておきましょう。

アパート経営を青色申告して節税する方法

青色申告で確定申告を行い一定の条件をクリアした方は、税制面でさまざまなメリットを受けられます。たとえば、アパート経営の規模が事業的規模として認められれば、最大65万円の所得控除が可能です。

青色申告とは

青色申告とは、事前に税務署の承認を受けて、(複式簿記で)記帳することにより税制面で優遇される制度です。
青色申告者になることで10万円から最大65万円の所得控除や繰越控除(控除しきれなかった損失を翌年以降に繰り越すこと)ができます。また、30万円未満の資産をその年度で全額経費に算入できる等のメリットもあります。

また、事業的規模の方は青色申告することで「青色専従者給与控除」を利用できるため、対象となる親族がいる場合、節税効果はさらに大きくなります。

青色専従者給与控除とは?

青色専従者給与控除とは、親族を従業員にして、不動産事業に従事したその親族に対して支払った給与や賞与を経費に算入できる制度です。青色専従者給与控除については、不動産貸付けが事業規模として認められている場合は適用できますが、それ以外の場合には適用できません。

参考:国税庁|事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分

参考:不動産事業が事業的規模でなくても「青色申告」は可能

  • 事業的規模に満たない場合でも、青色申告により繰越控除や30万円未満の少額減価償却資産の特例を適用できます。
  • 事業的規模に満たない場合でも青色申告特別控除10万円を適用できます。

経費が認められないリスクに注意

アパート経営に関わる経費をなんでも算入していると、税務調査時に経費について否認される可能性があります。経費が否認されるというのは、本来納付すべき税額を過少に申告していたことになります。「アパート経営に関係のある費用を経費に算入する」という考え方を持っていれば問題ありませんが、適当な理由をつけてなんでも経費に算入することはおすすめできません。

たとえば、アパートの管理や視察に自動車を利用している場合は、ガソリン代や車両維持費を経費に算入できます。ただし、実際に経費に算入できるのは「アパート経営に使った部分」のみです。プライベートの部分まで経費にしてしまうと税務署から否認されて申告漏れとして指摘を受けるでしょう。

交際費を経費に算入する際も、アパート経営に関係しているか?その関係性が調査官に認められるか?が大きなポイントになります。たとえ自分は関係があると思っていても、それを客観的に調査官に証明できなければ、費用を過大に申告していたと判断され申告漏れと見なされます。

どんな費用を経費に算入できるかについては曖昧な部分も多いため、不安が残る方は税理士への相談を検討しましょう。

自分でアパート経営の確定申告をする流れ

確定申告の手続きは決して難しいものではありませんが、収入や経費の計算が「難しい…」と感じてしまう方は多いかもしれません。

最後に、アパート経営の確定申告をする流れについて解説しますので、以下の3ステップを参考に、ぜひ取り組んでみてください。

  • ステップ①:収入と経費を計算して課税所得を算出する
  • ステップ②:確定申告書類を作成する
  • ステップ③:確定申告書類を税務署に提出する

ステップ①:収入と経費を計算

1月1日〜12月31日までに発生したアパート経営に関わる収入と経費を計算します。収入には、家賃のほか、返済不要な保証金・敷金・礼金等が含まれます。 【不動産所得( = 総収入金額 – 必要経費)】を計算して、ステップ1が終了です。

※特別控除を受ける方は【不動産所得( = 総収入金額 – 必要経費 – 特別控除額】で計算してください。

ステップ②:確定申告書類の作成

続いて、確定申告書類を作成します。
普段から会計ソフトを利用されている方は、会計ソフト経由で確定申告書類を作成するとスムーズに行えるでしょう。 会計ソフトを利用されていない方は、国税庁が提供している無料の【確定申告書作成コーナー】を利用しましょう。画面に表示された質問に対する答えを入力し、収入金額や経費を入力すると自動的に確定申告書が仕上がります。

作成する過程で不明な点があれば、税務署に問い合わせてみましょう。

ステップ③:確定申告書類を税務署に提出

確定申告書類の作成が完了したら、納税地(通常は住民票のある住所)の税務署に提出をします。

確定申告書の提出方法は3つあります。

  • 税務署へ申告書類一式を直接持参する
  • 税務署宛てに申告書類一式を郵送する
  • インターネット経由でデータ送信する(インターネット申告)

確定申告書の書き方が正しいかどうかわからない等の不安がある方は税務署へ直接持ち込み、相談をしたうえで提出すると良いでしょう。特に問題がない方は、郵送やインターネット申告をしましょう。

インターネット申告は、青色申告特別控除65万円を受けるための条件になっています。また、税金の還付を受ける場合に、還付されるまでの日数が短くなる等のメリットがあります。マイナンバーカードあるいはカードリーダーが必要ですが、お持ちの方はインターネットでの申告がおすすめです。

参考:確定申告後に住民税の納付通知書が届く

確定申告書類の提出により、所得税額が確定します。所得税の納付が完了すれば、確定申告のすべてが終了です。
確定申告書をもとに住民税が計算されます。確定申告終了後の5月頃に自治体から住民税の納税通知書が届くので、納期限に従って住民税を納付します。

まとめ

今回は、アパート経営の確定申告について解説しました。

確定申告に関する知識がまったくない方は、少し難しく感じてしまうかもしれませんが、本記事を参考にぜひアパート経営の確定申告に取り組んでみてください。

「アパート経営は不動産所得である」「アパートの取得費用は減価償却で経費に算入する」「不動産所得は損益通算が可能である」、この3つのポイントを抑えておけば、ご自身で確定申告ができるでしょう。

ただし、確定申告書類を作成する際に、収入や経費の計算方法等について不安が残る場合には、税理士に相談することをおすすめします。

税理士法人監修

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