マンションを相続すると相続税はいくらになる?税理士が解説

親が亡くなり、住んでいたマンションを相続する場合、さまざまな手続きが必要です。また、相続税がかかる場合は期限までに納めなくてはなりません。相続が発生する前に遺産分割や相続税について、やるべきことを把握しておきましょう。この記事では、マンションを相続する予定のある人が知っておきたい手続きや税金、分割対策などについて解説します。

相続税はいくらになる?マンションの相続税評価額を確認しよう

相続税を求めるには、最初に相続財産の評価額を算出します。現預金の評価額は額面と同額、株式などの有価証券は時価と同等の評価額になります。しかし、不動産は土地も建物も時価よりも低い額で評価されます。

不動産の評価額は4種類ある

路線価

その年の1月1日時点における主要な道路に面した1㎡あたりの土地価格を路線価といいます。路線価は相続税や贈与税を計算するときに使用され、国税庁が毎年7月から8月に公表しています。

固定資産税評価額

固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税の算定に用いられる土地の価格は固定資産税評価額です。固定資産税評価額は各市町村(東京23区の場合は東京都)が発表していて、3年に1回評価替えが行われます。

実勢価格

不動産の実際の取引が成立する価格を実勢価格といいます。実勢価格は、売り主と買い手の間で合意した価格です。

公示価格

国土交通省の地価公示によって公表された土地の価格を公示価格といいます。公示価格は一般の土地取引や相続税評価・固定資産税評価の目安として活用される地価です。土地鑑定委員会が選定した標準地の毎年1月1日時点の評価額をもとに決まり、3月に公表されます。

マンションの相続税評価額はどのように計算する?

マンションの評価は土地と建物の各相続税評価額を合計して求めます。

土地部分の評価

マンションの土地部分の評価額は以下の計算式で求めます。路線価は国税庁のホームページで確認してください。

土地部分の相続税評価額=路線価(1㎡あたり)×マンション全体(専有部分+共有部分)の面積(㎡)×自分の持ち分割合

建物部分の評価

建物部分の相続税評価額は、固定資産税評価額を用います。

マンションを相続しても相続税が発生しないことがあるのはなぜ?

相続において相続税は必ず発生するものではなく、相続税がかからない場合もあります。自分のケースで相続税がかかるのかを事前に確認しましょう。

相続税には基礎控除がある

相続税は亡くなった人の遺産の総額(プラスの財産から借金などを引いた金額)から基礎控除を差し引いた金額に対して税率がかかる仕組みです。基礎控除は以下の計算式で算出します。

3,000万円+(法定相続人の数×600万円)

遺産総額が基礎控除額の範囲内であれば相続税はかからない

基礎控除はどのケースでも必ず受けられます。そのため、課税価格(遺産総額)が基礎控除額以下ならば、相続税はかかりません。

たとえば、父が亡くなり、母と子ども2人で相続する場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+(3人×600万円))です。このケースでは遺産総額が4,800円以下であれば、相続税はかかりません。よって、申告も不要です。

マンション相続で節税につながる「小規模宅地等の特例」とは?

基礎控除額を超える評価額のマンションを相続することになった場合、相続税がかかります。しかし、宅地の相続には最大80%まで評価を下げられる「小規模宅地等の特例」という制度があり、マンションにも適用可能です。

土地の評価額を大幅に下げることができる

小規模宅地等の特例では、亡くなった人の自宅や賃貸アパートや店舗などの土地について最大80%評価額が減額されます。相続人にとっての生活基盤となっている自宅や事業用の土地を、相続税のために失うことがないように配慮された制度です。

小規模宅地の特例が適用できる土地には、建物が建っていなくてはなりません。相続の時点で空き地になっている土地や舗装されていない駐車場などは小規模宅地の特例の対象外となります。

どれくらい減額できるのか?

小規模宅地の特例の対象になる土地は、用途に応じて4つに区分されます。

※同族会社とは、亡くなった人とその親族の持株割合が50%を超える会社です。

用途土地の種類減額割合限度面積
特定居住用宅地等亡くなった人の自宅の敷地80%330㎡
貸付事業用宅地等亡くなった人が経営していた賃貸アパートの敷地50%200㎡
特定事業用宅地等亡くなった人が事業を営んでいた店舗や工場の用地80%400㎡
特定同族会社事業用宅地等亡くなった人が経営する会社(同族会社)に貸していた土地

※同族会社がその土地を貸付事業に使用している場合は貸付事業用宅地等の特例の対象となる
80%400㎡

適用条件

マンションの場合、小規模宅地の特例の対象となる宅地は、次のような土地です。

  • 自宅として居住していた土地
  • 店舗などの事業に使っていた土地
  • 賃貸用として第三者に貸し付けていた土地

居住用マンションの適用条件

亡くなった人の生前の自宅だったマンションについて、特定居住用宅地等として小規模宅地の特例を利用する場合の要件は次のとおりです。

  • 亡くなった人の居住用に使用されていた土地(マンション)であること
  • 相続人が亡くなった人の配偶者または同居の親族であること
  • 同居の親族が相続する場合は、相続税の申告期限までその土地(マンション)を保有し、居住し続けていること

特定居住用宅地等では亡くなった人に配偶者や同居の親族がいない場合、別居の親族でも「家なき子特例」として同様の評価減が適用される場合があります。

小規模宅地の特例の注意点

小規模宅地の特例を受けるためには、さまざまな要件があります。適用できるかについて事前に検討しておくことが望ましく、判断ができなければ税理士に相談するとよいでしょう。

特例の手続きとして、期限までに相続税の申告を行わなくてはなりません。提出書類には遺言書または遺産分割協議書が必要です。遺言がない場合、申告までに遺産分割協議を行います。

なお、小規模宅地の特例を利用した結果、相続税がかからなくても申告は必要です。

兄弟がいたらどうする?複数人でマンションを相続する場合

分譲マンションの相続は分割のしにくさから、兄弟のいる場合に相続争いになりやすい傾向があります。そのため、分割方法を事前に検討しておくと、トラブル防止につながります。以下に不動産を相続する場合の分割方法を紹介します。

分割方法は大きく分けて4つ

現物分割

最も単純な分割方法は、不動産を現物で分ける現物分割です。たとえば、兄弟2人で相続する場合に兄がマンションを相続し、弟は何も相続しない、というような方法です。

マンションのような不動産を分割するのは難しく、法定相続分のとおりには分けられません。よって、現物分割は不動産の相続には適さない方法です。

代償分割

不動産を相続人のうち1人が相続し、他の相続人に対して相続分相当の金銭を支払う方法を代償分割といいます。

たとえば、2,000万円相当のマンションを兄弟2人で相続するケースで、兄が1人でマンションを相続したとします。この場合、兄は弟に対して現金1,000万円を支払います。結果として、2人の相続で得た利益は1,000万円になるというわけです。

代償分割は、不動産を相続しない相続人にとっても納得感のある分割方法です。ただし、不動産を取得する相続人は、事前にお金を準備しておかなければなりません。

換価分割

相続した不動産を売却して換金し、相続人同士で分け合う方法を換価分割といいます。

上記の兄弟の相続の例では、マンションを2,000万円で売却し、それぞれが1,000万円ずつ受け取ることになります。

ほぼ完全に平等な分割なので、トラブルになる可能性が少ない方法です。また、代償分割のようにお金の準備も不要です。

相続したマンションに住む人がいなければ、最も現実的な方法といえます。

共有分割

相続した不動産を分割せず、相続人同士の共有名義にする方法を、共有分割といいます。遺産分割でもめて、相続税の申告期限までに結論が出せないときなどに選ばれる方法です。

しかし、この方法には以下のようなデメリットがあるため、なるべく他の方法での分割をおすすめします。

  • 共有の名義人全員の承諾がなければ、処分ができない
  • 共有の名義人の死亡により相続が発生し、持ち分などが複雑になる
  • マンションの管理費なども共同で負担しなくてはならない

遺産分割協議書を作る

兄弟でマンションの相続をする場合には、トラブル防止のために遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書とは、相続人全員で決めた、亡くなった人の財産の分け方を記した書面で、全員の署名と実印の押印が必要です。協議書は、相続人全員で合意した分割内容や、財産を取得する相続人の権利を対外的に証明してくれます。

遺産分割協議書はすべての相続で求められるものではありません。しかし、不動産の登記手続き、預貯金の引き出しなどには必要になります。

相続したマンションはどうする?選択肢は3つ

遺産分割の結果、マンションを取得することになった場合、どう使っていくかも考える必要があります。その選択肢は3つです。

相続したマンションに「住む」

相続発生前から住んでいる、相続人に持ち家がないなどの場合、相続したマンションに住むことが選択肢となります。その際には次の点に注意が必要です。

  • マンションの管理体制、修繕積立金について確認し、問題がないか
  • 立地や利便性、修繕計画を確認し、資産価値が下がらないか

なお、マンションの固定資産税及び都市計画税は相続人の負担となります。

相続したマンションを「貸す」

勤務地が相続したマンションから遠い場合などは、第三者に貸し出すことも選択肢の1つです。

賃貸マンションは、借り手がいる間は安定収入が得られますが、長期間空室になることもあります。空室時には管理費や修繕積立金などの経費が持ち出しになります。空室対策として築年数が古い物件には、リフォームも必要になるでしょう。

また、家賃収入には不動産所得として所得税がかかります。これらのことをトータルで考え、賃貸経営の収支がプラスになるかを事前に検討しましょう。

相続したマンションを「売却する」

相続したマンションに住まない人は、空き家の管理や管理費・修繕積立金などの負担のために維持が難しいことがあります。その場合は、マンションの売却を検討しましょう。マンションを売却できれば、その後は維持管理の手間や諸経費の負担もありません。

ただし、マンションの売却には次のようなリスクも理解しておく必要があります。

  • 買い手が見つからず、希望価格を大きく下回る金額で手放すリスク
  • 共有名義の場合、名義人全員の合意がないと処分できないため、売却できないリスク

放置せず適切な判断をするのが重要

相続したマンションに住まない場合、空き家にしておくと建物の劣化が進みます。劣化防止のためには、定期的な通風などの手入れが必要です。また、固定資産税や都市計画税がかかり、持ち家に住んでいる人なら2重の負担になります。

長く放置するほど資産価値が下がり、費用もかさみます。相続したマンションは放置せず、早期に適切な判断をしましょう。

相続した後に気をつけなければならないことは?

マンションの相続で、相続税がかかる場合は期限内に納税しなければなりません。また、現預金と違い、相続税以外の税金もかかることに注意が必要です。

相続税以外にもこんな税金が発生する

マンションの相続には相続税以外に支払う税金があります。

所得税・住民税
  • 相続したマンションを貸し付けた場合にかかる(不動産所得)
  • 相続したマンションを売却した場合にかかる(譲渡所得)
固定資産税・都市計画税相続したマンションを所有している間にかかる
登録免許税相続したマンションを登記するときにかかる

相続税の納付は10カ月以内

相続税の申告と納付は、相続発生後10カ月以内に行わなければなりません。相続税は現金での一括納付が原則です。納付が1日でも遅れると延滞税がかかるため、期限には注意しましょう。

まとめ

マンションの相続には相続税対策だけでなく、兄弟がいる場合の分割対策など検討すべき事項が多々あります。さらに相続税の申告期限までにすべてを行うには、相続発生前からの準備が必要です。相続人だけで重要事項を判断するには困難が伴うことも多く、手続きには手間や時間がかかります。できれば早い段階で相続に強い税理士に相談し、手続きも代行してもらうことをおすすめします。

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