サラリーマンや会社員の副業は確定申告すべき?節税方法は?
働き方改革による副業解禁の促進やクラウドソーシングの普及などで、副業で収入を得る会社員が増えています。副業の収入が一定の基準を超えると、確定申告による納税が必要です。勤務先で年末調整をしている会社員の中には、確定申告をしたことがない方もいるでしょう。この記事では、副業をしている会社員の方向けに確定申告が必要になる収入の基準や確定申告のやり方を解説します。
副業で確定申告が必要なサラリーマン(会社員)とは
サラリーマン(会社員)の方に限らず、すべての国民に納税の義務があり、申告漏れや脱税を画策しても、マイナンバー制度の開始により、5年以内の税務調査でバレるリスクが高まります。
年末調整と確定申告の違いについて
会社員や公務員などの給与所得者は、勤務先が源泉徴収によって所得税を納税してくれます。この納税額は仮の金額のため、年末に調整をし、払いすぎた税の還付や不足分の徴収が行われます。勤務先が従業員に代わって申告および納税をするのが年末調整というわけです。一方、確定申告は年末調整で反映できない所得や控除を自分で申告し、納税する方法です。副業の収入は年末調整では対応できないため、自分で確定申告する必要があります。
副業の「20万円」ルールとは?
会社員が副業で収入を得た場合に確定申告が必要になるのは、以下のケースです。
- 副業のアルバイト先から受け取る給与収入とその他(給与所得と退職所得以外)の所得金額の合計が20万円を超える場合
- 副業がクラウドソーシングなどで、本業以外の所得金額(給与所得と退職所得以外)の合計が20万円を超える場合
注意が必要なのが、「収入」と「所得」の違いで、所得とは収入から必要経費を差し引いた利益に相当する金額です。上記1の給与収入とは収入金額そのものであり、給与所得とは給与収入から所得控除をしたものです。
副業がクラウドソーシングやハンドメイド品の販売などであれば、収入から経費を差し引いた所得が20万円超かで判断します。
サラリーマン(会社員)が副業で落とせる経費の例
副業で収入を得るためにかかった支出は、経費として差し引けます。経費として認められるには、収入を得るために直接かかった費用でなければなりません。そのため、仕事とプライベートで併用しているものは、仕事で使う割合を按分して経費に計上します。副業の主な経費は次のようなものです。
- 仕事に関係する書籍代
- 交通費
- パソコン等の購入費
- 販売する商品の仕入れ原価
- 通信費
サラリーマンの方は経費の領収書を税務署に提出する必要はありませんが、5年間の保管義務があります。税務調査対策としてできれば7年保管しておきましょう。
副業のアルバイトで20万円を超えた例
以下のようなケースでは、確定申告が必要です。
⦁ 飲食店アルバイトの給与収入が年間20万円超え
なお、本業と副業バイトの合計収入が103万円以下ならば所得がゼロとなり、確定申告が不要となります。
FXや株の利益が20万円を超えた例
FXトレーダーで以下のようなケースでは、確定申告が必要です。
- 年間のFXの運用益:100万円
- FX取引のノウハウの情報商材の購入費用:10万円
- FX雑所得金額:90万円(100万円-10万円)
また、株式投資をしている人は次のようなケースで、確定申告が必要になります。
- 取引口座が一般口座または特定口座(源泉徴収なし)
- 年間の売却代金:150万円
- 購入代金と手数料の合計:100万円
- 譲渡所得金額:50万円(150万円-100万円)
不動産所得が20万円を超えた例
次のようなケースでは、不動産投資で確定申告が必要となります。
⦁ 年間の家賃収入:120万円
⦁ 減価償却費:45万円
⦁ 固定資産税:10万円
⦁ 不動産所得金額:65万円(120万円-(45万円+10万円))
アフィリエイトや転売の所得が20万円を超えた例
ブログアフィリエイトをしている人のケースで確定申告が必要となるのは、以下のようなケースです。
- 年間のアフィリエイト収入:50万円
- 年間のドメイン代:1万円
- 年間のサーバー代:5万円
- 所得金額:44万円(50万円-(1万円+5万円))
メルカリやアマゾンで転売や物販をしているケースで、確定申告が必要となるのは、以下のようなケースです。
- 1年間の商品の売上:70万円
- 売れた分の仕入れ代金:35万円
- 商品の送料:3万円
- 所得金額:32万円(70万円-(35万円+3万円))
副業の所得が「20万以下」でも確定申告が必要なケース
2カ所以上から給与や賞与を受けている人は、副業の所得が20万円以下でも確定申告が必要です。※勤務先で年末調整した所得税額が正しい額ではないためです。
副業の所得が20万円以下でも住民税の申告は必要なので要注意!
副業の所得が20万円以下で確定申告をしない場合でも、別途住民税の申告が必要です(副業の所得が1円でもあれば必要)。住民税の申告は、市区町村の窓口に申告書を提出または、郵送します。
副業の所得が20万円以下でも確定申告した方が得するケース
確定申告をすると得をするのは以下のようなケースです。デメリットもあり、副業所得が20万円以下で確定申告をすると、申告義務がなかった20万円以下の副業所得も申告対象になるため、本来かからなかったはずの税金が増える可能性があることに注意が必要です。
医療費控除を受ける場合
1年間に支払った医療費が10万円を超えると超過分を所得から控除できます。これを医療費控除といいます。医療費控除は同居している家族の分と合算が可能です。1人分では10万円に満たなくても、家族分の合計で該当する可能性が高くなります。医療費控除は年末調整では対応できないため、確定申告が必要です。
ふるさと納税で寄附金控除を受ける
ふるさと納税の寄付金控除を受けるには、確定申告が必要です。年間の寄附先が5自治体以内ならワンストップ特例という制度で確定申告は不要になります。
株式投資で損が出た場合
株式や投資信託の投資で損失が出た場合、同じ上場株式等に該当する他の黒字と相殺できます(損益通算という)。損益通算をしてもマイナスが残る場合、翌年以降3年にわたり、その年の所得から繰り越した赤字を差し引けます(損失の繰越控除という)。損益通算は同一の特定口座(源泉徴収あり)で発生した分は自動的に処理されるため、確定申告は不要です。しかし、A口座とB口座のように異なる口座間の損益通算や、損失の繰越控除を受けるには確定申告が必要です。
会社員の副業で迷う「事業所得」と「雑所得」の基準とは?
家賃収入やFX,株以外の副業所得は「雑所得」に分類されることが一般的です。
そもそも事業所得と雑所得は何が違うのか、どんな利点があるのか、わかりやすく解説します。
副業で「事業所得」が認められる条件とは?
「所得」とは、事業所得、雑所得、不動産所得、譲渡所得など、10種類に分けられます。確定申告をする際にどの所得に該当するのか、自身で見極める必要があります。
事業所得の判断基準とは
副業で物販、エンジニアなどをしている場合、所得区分が「事業所得」になるケースがあります。事業所得に該当するか否かの法的な基準はなく、雑所得との区別は困難です。一般的には社会通念上、副業が事業的規模と認められる場合に、事業所得に該当すると見なされます。事業的規模とは、独立・反復・継続して行われる仕事であることが必要です。単発の仕事や、お小遣い稼ぎ程度では事業的規模と認めらる可能性が低くなります。
事業所得が否認されると修正申告が大変です
本来、事業所得に該当しない副業の所得を事業所得として申告すると、税務署から否認される可能性があります。事業所得として申告したけれども該当しない可能性がある場合、税務署から以下のような対応を受けることが考えられます。
- 申告内容についての「お尋ね」の用紙が送付される
- 税務署から確認の電話がくる
- 税務調査の結果、否認される
税務調査によって事業所得に該当しないと判断された場合、修正申告を求められます。税務署の指摘により修正申告を行う場合、過少申告加算税や延滞税が加算されます。※税務署の指摘前に自己申告すれば加算されません。
税務署の決定に対し納得できない場合、国税不服審判所に異議申し立てが可能です。ただし、手続きの手間や税理士費用もかかり、申し立てが却下されるケースが多いです。
事業所得は「青色申告」や「損益通算」による節税効果が大きい
青色申告とは?サラリーマン副業で節税対策が可能な制度
青色申告とは、複式簿記の原則に基づいて記帳、申告を行う方式です。青色申告が適用される所得は、事業所得・不動産所得・山林所得となります。青色申告は複雑な複式簿記での記帳が必要なため、簿記3級程度の知識が必要となります。そのため、簡易な白色申告に比べて、手間のかかる方法です。
青色申告でサラリーマンの副業所得を節税するスキームとは
青色申告を行う方は税制優遇を受けられ、支払う税額を抑えられます。青色申告による税制優遇には、以下のようなものがあります。
- 専業者に支払った給与を全額経費にできる
- 事業で損失が出た場合、その損失分を翌年から最長3年間繰り越せる
- パソコンなど30万円未満の減価償却資産を購入した場合、一度に全額経費にできる
- 最高65万円の特別控除が受けられる
損益通算とは?節税メリットは?
事業所得で赤字が出た場合、他の黒字の所得と相殺できます(損益通算という)。副業をしているサラリーマンの方が事業で赤字を出した場合、本業の給与所得から損失を差し引くことが可能です。これにより課税所得が少なくなり、所得税が還付され、翌年の住民税額も低くなります。例えば、給与所得500万円の人が不動産事業で100万円の赤字を出した場合、年間所得は400万円(500万円-100万円)と課税所得が少なくなります。
「雑所得」は白色申告のみ可能
副業の所得が事業所得に該当しない場合、雑所得として扱われます。雑所得は事業的規模に該当しない、継続性がない仕事で得た所得です。雑所得は青色申告の対象外となり、青色申告の税制優遇を受けられません。雑所得の計算でも、直接かかった経費を差し引くことが可能です。また、同じ総合課税の雑所得(公的年金や仮想通貨の所得)との損益通算が可能です。たとえば、仮想通貨の年間所得が100万円、副業の損失が40万円の場合、雑所得は60万円(100万円-40万円で損益通算)となります。
確定申告したら会社に副業がバレるってホント?
世の中は副業解禁の風潮ですが、今でも勤務先が副業を禁止しているケースがあります。そこで、確定申告をしたら副業が会社に発覚するのを心配する方もいるでしょう。ここでは、確定申告で副業が会社にバレるケースと、知られないようにする方法を解説します。
住民税でバレる可能性がある
副業が会社に発覚する理由の1つに、副業所得に対する住民税の増加が考えられます。本業の給与所得に対して会社が徴収する住民税額よりも(役所から送付される)住民税の請求額が多い場合、別の収入の存在に気づかれるリスクが高まります。
会社に知られたくないときは
副業を会社に知られたくない場合、確定申告や住民税の申告時に、住民税の納付方法で普通徴収を選択します。具体的には確定申告であれば、確定申告書第二表「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」欄で「自分で納付」にマルをつけます(市区町村の住民税の申告書にも同様の欄があります)。ただし、副業でアルバイト先から給与をもらう場合、原則として普通徴収が認めらません。副業が給与所得の場合でも普通徴収に対応してくれる自治体もあるので、役所に問い合わせてみるとよいでしょう。
サラリーマン副業向け確定申告のやり方
確定申告をする場合、申告書は手書きもできますが、パソコンやスマートフォンでも作成可能で便利です。申告は毎年2月16日から3月15日の間に行います。最後に簡単で便利な申告書の作成方法を解説します。
確定申告書はパソコンで作成するのが簡単です
確定申告書は国税庁のホームページの「確定申告書作成コーナー」を利用すると、簡単に自動で作成できます。確定申告書作成コーナーでは、画面の案内に沿って金額等を入力すると税額が自動計算され、申告書が完成します。ここで作成した申告書は以下の方法のいずれかの方法により税務署へ提出します。
- マイナンバーカード及びICカードリーダライタ(またはマイナンバーカード対応のスマートフォン)を利用したe-Tax
- e-Tax用のID・パスワードを利用したe-Tax
- 作成した申告書を印刷して税務署に郵送または持参
スマホからも作成・送信できる
国税庁のホームページの「確定申告書作成コーナー」はスマホ対応しております。
スマホだけで申告を行う場合、給与所得、雑所得及び一時所得の方が対象となり、2021年時点で、事業所得や不動産所得などには未対応です。
*スマホで確定申告(副業編)を参考にしましょう。
サラリーマン副業向け確定申告に必要な書類
確定申告には申告書に添付する書類と、税額計算に必要な書類があります。ここでは、副業するサラリーマンや会社員の方が確定申告時に必要となる書類をお伝えします。
提出は不要だが、作成にあたり必要な書類
確定申告書を作成するには際に以下のような書類を準備しましょう。
- 給与所得の源泉徴収票
- 副業の収入がわかる書類(支払調書など)
- 副業の必要経費がわかる書類(領収書など)
- 所得税の還付を受ける場合、申告者名義の口座番号がわかるもの
提出または提示が必要な書類
確定申告の際に提出又は提示が必要となる書類は、青色申告と白白申告で異なります。青色申告・白色申告いずれでも必要な書類は以下のとおりです。
- 本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)
- 確定申告書に添付する各種控除関係の書類(医療費控除の明細書、ふるさと納税の寄附金受領証明書など)
青色申告の場合
青色申告で提出する書類は次のようなものです。
- 確定申告書B
- 青色申告決算書
確定申告書Bは所得の種類を問わずに使用できる申告書です。事業所得や不動産所得は確定申告書Aでは申告できないため、青色申告では確定申告書Bを使用します。
白色申告の場合
白色申告で提出する書類は次のようなものです。
- 確定申告書AまたはB
- 収支内訳書
確定申告書Aは給与所得、雑所得、配当所得、一時所得のいずれかに使用できる申告書です。確定申告書Bよりも入力が簡略化されているので、事業所得や不動産所得がない方は確定申告書Aを使用するとよいでしょう。
まとめ
副業の所得が20万円を超えると、確定申告が必要になります。確定申告をしたことがないサラリーマンや会社員の方にとって、申告作業は負担がかかります。また、副業が軌道に乗り、所得が増えてくると、本業をしながらの対応が難しくなります。節税や申告にかかる作業の効率化について、税理士へ相談することをおすすめします。