不動産売却 確定申告の計算方法・相続土地・マンション・自宅別に解説
不動産売却の確定申告について
不動産売却後に確定申告が必要な方
土地や建物を売却した時に売却益(利益)が発生した場合、その売却益に対する税額を計算し、確定申告を行う必要があります。
売却益(X) = 売った金額(a) - 買った金額(b) - 取得手数料(c)です。
たとえば、1,000万円で買った土地を2,000万円で売って、手数料等が100万円かかった場合には、2,000万円(a)-1,000万円(b)-100万円(c)=900万円(X)が売却益となります。
確定申告は1月1日から12月31日の間に発生した売却益を、翌年の2月16日から3月15日の間に行います。
不動産売却後に確定申告が不要な方
土地や建物を売却した時に売却損(損失)が発生した場合、確定申告する必要はありません。
たとえば、1,000万円で購入した土地を500万円で売却し、手数料等が100万円かかった場合、500万円(a)-1,000万円(b)-100万円(c)=-600万円(X)が売却損となります。
この場合、税額が発生せず、確定申告の必要がありません。
不動産売却による確定申告の計算方法
マンションやアパート売却による確定申告の計算方法
自らが居住用に使用していない投資用のマンションやアパートを売却した場合の計算方法は
売却益(X) = 売った金額(a) - 買った金額(b) - 取得手数料(c)です。
例)1500万円で売却した、1000万円で購入した、100万円の手数料がかかった。
400万円(X) = 1500万(a)-1000万円(b)-100万円(c)となります。
建物と土地で異なる取得費の計算方法
マンションやアパートの買った金額は建物と土地の2つに分けて考えます。
建物を買った金額(b)は減価償却費を行った後の金額(簿価)です。
土地を買った金額(b)は購入した時の金額です。
買った金額の合計が1000万円の場合、
建物の金額(簿価) 50万円と土地の金額(購入価格) 950万円を足して1,000万円(b)になる計算です。
取得手数料(c)は売却する際にかかった経費です。
※売却時の仲介手数料や、契約書に貼る印紙代などが該当します。
なお、減価償却費を差し引いた後の金額(簿価)が、実際に購入した金額の5%未満だった場合、売った金額(a)×5%を買った金額(c)に置き換えできます。
売却益から税率を求める
売却益を求めたら、その金額に税率を乗じて所得税額を求めます。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合、長期譲渡所得として所得税率は15.315%となります。
一方、所有期間が5年未満の場合、短期譲渡所得として所得税率は30.63%となります。
なお、住民税の税率は長期譲渡所得の場合5%、短期譲渡所得の場合9%です。
投資用の不動産を売却した場合、適用される特例はないため、必ず所得税と住民税が発生します。
自宅(家・マイホーム)を売った場合の確定申告と計算方法
自宅として使っていた建物や土地を売却した場合も
売却益(X) = 売った金額(a) - 買った金額(b) - 取得手数料(c)を計算します。
売却益から税率を求める点(長期・短期譲渡の税率)はマンションやアパートの例と同じです。
マイホーム売却益には特例がある
マイホームを売却した場合、所有期間に関係なく売却益から3,000万円(別荘や家族への売却を除く)を控除できます。
マイホームの売却益が3,000万円以下の場合は、この特例を利用すれば税金は発生しません。
長期譲渡所得・短期譲渡所得の区分のほか、売却した年の1月1日において所有期間が10年を超える場合、6,000万円までは10.21%の軽減税率が適用できます。
マイホーム買い替えに対する特例
マイホーム買い換え時に発生する譲渡所得を将来に繰り延べる特例もございます。
さらにマイホーム買い換え時に発生する譲渡損を他の給与所得や事業所得と損益通算できる特例もございます。
マイホームを売却後、別のマイホームを購入する際は、マイホーム買い替えの特例が無数に存在しますので、税理士に相談することをおすすめします。
土地を売った場合の確定申告と計算方法
土地を売却した場合も
売却益(X) = 売った金額(a) - 買った金額(b) - 取得手数料(c)を計算します。
土地の価値は、時間の経過により減少しないため、減価償却費の計算は行わず、当初の取得費をそのまま用います。
また、自宅の敷地(土地)を売却した場合、税金を軽減する特例がありますが、それ以外の土地(たとえば駐車場の用地として利用していた土地、賃貸物件が建っていた土地、建物だけを取り壊した土地)を売却しても、特別控除はありません。
相続した不動産を売った場合の確定申告と計算方法
相続した不動産を売却した場合も
売却益(X) = 売った金額(a) - 買った金額(b) - 取得手数料(c)を計算します。
ただし、相続した不動産の場合、注意すべきポイントが複数あります。
買った金額(b)は被相続人が購入した当時の金額となります。
また、当初取得した金額(b)が分からない場合や、先祖代々の土地を売却する場合などは、売った金額(a)の5%を買った金額(b)に置き換えます。
長期譲渡所得か短期譲渡所得の判断は、相続時ではなく、被相続人が実際にその不動産を購入した時点から今日までの期間で判断されます。
そのため、相続した不動産の多くは長期譲渡所得に該当すると考えられます。
被相続人が住んでいた自宅やその敷地を売却した場合、要件を満たせば3,000万円の特別控除が適用されます。
不動産売却による確定申告の流れ
不動産売却後に確定申告を行う方法を解説します。
事前に準備するもの
不動産を売却して確定申告をする場合、
- 確定申告書B
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
を準備する必要があります。
これらの書類は、税務署の窓口か、国税庁のホームページで入手可能です。
また、不動産を売却した際の売却益を計算し、明細書を記載するために、
- 売買契約書
- 登記事項証明書
- 仲介手数料などの領収書
を準備しておきます。
これらの書類は税務署に提出する必要はありませんが、後日税務署から提示を求められる可能性があるので、作成後も保管しておきましょう。
また、譲渡所得以外に給与所得がある場合、申告書に記載しなければなりません。そのため、年末調整を終えた後の給与の源泉徴収票も準備しておきましょう。
申告書類を作成する
不動産売却に伴う確定申告書類の作成方法を解説します。
国税庁のサービスを使う
国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を利用する方法です。
入力する金額を正しく入力すればすべて自動で計算されます。
※計算ミスや記入漏れを防げます。
申告に関してわからないことがあれば、電話や税務署の窓口で聞くことができます。しかしながら節税対策など特殊な質問には対応してもらえません。
会計ソフトを使う
申告書の作成ソフトに、不動産を買った金額や売った金額を入力するだけです。白色申告の場合、無償で使える会計ソフトもあるのでパソコン操作に慣れている方におすすめです。ただし、ソフトの操作方法や節税対策などを自身で調べる手間がかかります。
税理士に依頼する
記載内容や確定申告書の作成に不安がある人は、税理士に依頼するようにしましょう。
計算ミスをなくすことができるだけでなく、より税負担の少ない節税対策なども考慮できます。
書類を提出する
確定申告書を税務署に提出します。
自分で税務署に持参するか、郵送も可能です。
この時、控え用の申告書を一緒に作成しておき、申告したら日付の入った受領印を押してもらって、保管しておきます。
また、国税庁HPの確定申告書等作成コーナーを利用した場合や、税理士に依頼した場合は、データ送信で完結する電子申告を利用できます。
確定申告書等作成コーナーを利用する場合、申告する人のマイナンバーカードや読み取り専用機器が必要となるのに対して、税理士に依頼した場合は税理士の電子証明書で申告できます。
金銭的な負担と手間を考えて、「国税庁HP」「会計ソフト」「税理士」のどれが自分にとって都合が良いか、あらかじめ検討しておきましょう。
最後に納税する
簡単な納税方法は、税務署で納付書を入手し、金融機関で支払う方法です。
このほか、クレジットカード納付や預金口座からの振替納税も利用できます。
なお、クレジットカード納付は、納税額に応じて手数料がかかります。
たとえば納税額が50万円の場合、手数料は4,180円かかるため、確認してから行うようにしましょう。
不動産売却して確定申告しないペナルティー
不動産を売却して確定申告義務を怠った場合、無申告加算税が課されます。
無申告加算税は、納付すべき税額が50万円までは15%、50万円を超える部分の金額については20%となります。
このほか、納期限から遅れて納付した場合には、延滞税が発生します。
期限後に申告した場合、申告書の提出日が納期限となり、遅れた日数に応じて、年率2.5%(令和3年に納期限から2か月以内に納付した場合)で延滞税の計算が行われます。