相続した土地や不動産売却にかかる税金と確定申告について
相続した土地や不動産売却にかかる税金の種類
相続した土地や建物などの不動産を売却した際にかかる税金について解説します。
相続不動産売却にかかる税金は相続税と異なりますので注意しましょう。
かかる税金の種類 | 説明 |
登録免許税 | 相続登記をする際に法務局に納付する |
所得税(復興特別所得税を含む) | 売却益(売却代金-取得費-譲渡費用)にかかる税金 |
住民税 | 売却益にかかる税金 |
印紙税 | 売買契約書に貼付する |
登録免許税とは
相続した土地や建物の名義変更に登録免許税がかかります。
相続した土地や建物の名義変更は法務局で登記手続きが必要です。
登録免許税の額は一般的に、相続した土地や建物の不動産価額の1,000分の4(0.4%)とされています。
たとえば、3,000万円の土地や建物を相続した場合、登録免許税は、12万円となります。
所得税(復興特別所得税を含む)とは
相続した土地や建物などの不動産を売却すると、譲渡所得が発生します。
譲渡所得の金額は、不動産を売った価格から不動産を買った金額と経費を差し引いて計算します。(売却益-取得費-経費=譲渡所得)
計算の結果、譲渡所得の額がプラスになれば、所得税が発生します。
一方、譲渡所得の額がマイナスになった場合は、所得税は発生しません。
譲渡所得に対する税率は、その不動産を保有していた期間に応じて変わります。
譲渡所得に2種類の税率がある
不動産を売却した年の1月1日における保有期間が5年を超える場合は、所得税率は15%、復興特別所得税は0.315%の合計15.315%となります。
一方、保有期間が5年以下の場合は、所得税率が30%、復興特別所得税が0.63%の合計30.63%となります。
保有期間は被相続人が取得日からカウントします。
過去の取得費がわからない場合
相続した土地や建物をいくらで取得したのかが分からない場合や、取得費がきわめて少額になる場合は、「売却代金×5%」で計算した金額を取得費とすることもできます。
売却にかかる経費の例
経費には、土地や建物を売却した時に支払った仲介手数料、土地を売却するために建物を取り壊した場合の解体費用、土地の面積や境界を確定するための測量費などが該当します。
所得税の計算例
所有期間10年、取得費3,000万円の土地を6,000万円で売却し、仲介手数料として200万円を支払った場合
譲渡所得の金額は、6,000万円-3,000万円-200万円=2,800万円となります。
売却した年の1月1日における所有期間が5年超となるため、所得税額・復興所得税額の合計額は、2,800万円×15.315%=4,288,200円となります。
住民税とは
所得税と同様に、相続した土地や建物を売却すると相続人に対して住民税がかかります。
住民税の税率も所有期間で計算される
不動産を売却した年の1月1日における保有期間が5年を超える場合、住民税率は5%となります。
一方、保有期間が5年以下の場合は、住民税率が9%となります。
先ほどの例で、住民税額を計算してみましょう。
住民税の計算例
所有期間10年、取得費3,000万円の土地を6,000万円で売却し、仲介手数料として200万円を支払った場合
譲渡所得の金額は、6,000万円-3,000万円-200万円=2,800万円となります。
売却した年の1月1日における所有期間が5年超となるため、住民税額は2,800万円×5%=140万円となります。
印紙税とは
相続した土地や建物を売却した際に売買契約書を作成します。この契約書に収入印紙を貼付する決まりがあります。
収入印紙の金額は、売買契約の金額によって異なります。
たとえば、契約金額が5,000万円超1億円以下の場合は、印紙税の額は6万円とされています。
ただし、令和4年3月31日までに作成される契約書については軽減税率の適用により、3万円となります。
相続した土地や不動産売却にかかる税金を軽減する特例
3,000万円の特別控除の特例
相続した土地や建物に住んでいた人が、マイホームを売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除(マイナス)できる特例があります。
この場合、所有期間の長短に関係なく、最高で3,000万円の特別控除を受けることができます。
3000万円控除の条件
売却した時点でその家屋に住んでいる場合、文字どおり自宅(マイホーム)を売却しているため、3000万円控除の特例が適用されます。
このほか、現在は住んでいなくても以前に住んでいた家屋や敷地を売却した場合でも、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すれば適用されます。
または、家屋を取り壊した日から1年以内に土地の売買契約を締結し、その家屋に住まなくなってから3年を経過する日の12月31日までに売却すること、そして更地になってから貸駐車場などに転用していないことが適用条件となります。
マイホームが店舗併用住宅の場合
店舗併用住宅を売却した場合、居住用の部分だけに適用することができるため、面積で按分が必要です。
居住用部分が90%以上ある場合には、全体に3,000万円の特別控除を適用することができます。
空き家を売ったときの特例
被相続人が住んでいたものの、亡くなってからは空き家だった土地や建物を売却した場合、最高で3,000万円の特別控除が受けられます。
空き家特別控除の条件
空き家を売却する場合、次の3つの要件をすべて満たす空き家でなければならないため、居住用財産の特例と比較すると、適用できるケースは限定されます。
①昭和56年5月31日以前に建築されたものである
②区分所有建物登記されている建物でない
③相続開始直前において被相続人以外にその家屋(住宅)に居住する人がいなかった
また、被相続人が亡くなってから家屋(住宅)を取り壊した場合も、相続開始の直前において、被相続人の居住する家屋の敷地であったことが必要です。
これに加えて、その土地や家を相続した後に、事業用や貸付用・居住用などに使用していないこと、そして家屋を売却する場合は耐震基準を満たすことが求められます。
空き家特別控除の期限と注意点
相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却した場合に適用できます。
また、売却代金が1億円以下となった場合のみ、適用を受けることができます。
この特例と、次に紹介する「取得費加算の特例」を一緒に適用することはできないため、注意が必要です。
取得費加算の特例
土地や建物の相続に対して、相続人が支払った相続税の金額を取得費に加算することができます。
相続人の中には、かなり多額の相続税を負担している場合もあることから、相続税を取得費に加算することには大きなメリットがあります。
※売却した土地や建物の割合に基づいて計算した金額を取得費に加算できます。
たとえば、取得した相続財産の評価額は全部で1億円、そのうち売却した土地の評価額は2,500万円を例に計算します。
支払った相続税額が1,200万円だったとすると、1,200万円×2,500万円/1億円=300万円を取得費に加算できます。
※取得費とは、所得税の計算に用いる(売却益-取得費-経費=譲渡所得)の取得費です。売却益を小さくできるため、国に納める税金を軽減できます。
取得費加算の特別が使える期限と注意点
なお、相続開始日から3年10か月以内に土地や建物を譲渡しなければ、取得費加算の特例を受けることはできません。
また、「空き家を売った時の特例」と併用することはできないため、どちらが有利になるのか検討したうえで判断が必要です。
相続した土地や不動産売却に伴う確定申告の方法
確定申告前に準備するもの
不動産を売却して確定申告をする場合、
・確定申告書B
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】
を準備する必要があります。
これらの書類は、税務署の窓口か、国税庁のホームページで入手可能です。
また、不動産を売却した際の売却益を計算し、明細書を記載するために、
・売買契約書
・登記事項証明書
・仲介手数料などの領収書
を準備しておきます。
これらの書類は税務署に提出する必要はありませんが、後日税務署から提示を求められる可能性があるので、作成後も保管しておきましょう。
また、譲渡所得以外に給与所得がある場合、申告書に記載しなければなりません。そのため、年末調整を終えた後の給与の源泉徴収票も準備しておきましょう。
所得控除など特例に関する必要書類
取得費加算の特例の適用を受ける場合には、相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書と、相続税申告書の写しを準備しておく必要があります。
マイホームを売ったときの特例に関する必要書類
» 譲渡所得の内訳書
取得費の特例に関する必要書類
» 譲渡所得の内訳書
空き家を売ったときの特例に関する必要書類
» 譲渡所得の内訳書
» 売った資産の登記事項証明書
» 耐震基準適合証明書又は建設住宅性能評価書の写し
» 売買契約書の写し
確定申告の書類を作成する
国税庁のサービスを使う
国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を利用する方法です。
入力する金額を正しく入力すればすべて自動で計算されます。
※計算ミスや記入漏れを防げます。
申告に関してわからないことがあれば、電話や税務署の窓口で聞くことができます。しかしながら節税対策など特殊な質問には対応してもらえません。
会計ソフトを使う
申告書の作成ソフトに、不動産を買った金額や売った金額を入力するだけです。白色申告の場合、無償で使える会計ソフトもあるのでパソコン操作に慣れている方におすすめです。ただし、ソフトの操作方法や節税対策などを自身で調べる手間がかかります。
税理士に依頼する
記載内容や確定申告書の作成に不安がある人は、税理士に依頼するようにしましょう。
計算ミスをなくすことができるだけでなく、より税負担の少ない節税対策なども考慮できます。
確定申告の書類を提出する
確定申告書を税務署に提出します。
自分で税務署に持参するか、郵送も可能です。
この時、控え用の申告書を一緒に作成しておき、申告したら日付の入った受領印を押してもらい保管しておきます。
また、国税庁HPの確定申告書等作成コーナーを利用した場合や、税理士に依頼した場合は、データ送信で完結する電子申告を利用できます。
確定申告書等作成コーナーを利用する場合、申告する人のマイナンバーカードや読み取り専用機器が必要となるのに対して、税理士に依頼した場合は税理士の電子証明書で申告できます。
金銭的な負担と手間を考えて、「国税庁HP」「会計ソフト」「税理士」のどれが自分にとって都合が良いか、あらかじめ検討しておきましょう。
最後に納税する
簡単な納税方法は、税務署で納付書を入手し、金融機関で支払う方法です。
このほか、クレジットカード納付や預金口座からの振替納税も利用できます。
なお、クレジットカード納付は、納税額に応じて手数料がかかります。
たとえば納税額が50万円の場合、手数料は4,180円かかるため、確認してから行うようにしましょう。
相続した土地や不動産売却にかかる税金まとめ
相続した土地や不動産の売却にかかる税金を正しく把握して、適切に確定申告しましょう。
相続した不動産が居住用の場合、売却時にかかる所得を最大3000万円控除する特例もございますので、必ず専門家に適用条件を確認し、特例に必要な書類作成を依頼しましょう。