FX取引にかかる税金とは?計算方法と海外の税率まとめ

FX取引で利益が出ると、税金を支払わなければなりません。どんな税金がどのタイミングでかかってくるのか、確定申告をどうしたらいいのかなど不安に感じる方もいるのではないでしょうか。FXは株式や投資信託と異なる税制の金融商品です。この記事ではFXの税金について詳しく解説します。

FXの取引にかかる税金とは

FX取引で利益が出ると「先物取引に係る雑所得等」として所得税と住民税(地方税)が20.315%かかり、原則として確定申告が必要です。

所得税と住民税が発生する

運用益から必要経費を差し引いた利益(所得)に対して所得税と住民税がかかります。FXの運用益には、為替損益とスワップポイントの2種類があります。所得の計算式は以下のとおりです。

所得 = 為替損益 + スワップポイント - 必要経費

税金 = 所得 × 20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%) となります。

なお、為替損益はポジションを決済したタイミングで確定し、出金の有無は関係ありません。

①為替損益とは

FXの運用益のうち、為替損益とは通貨の売買取引を決済して確定した損益です。含み益を決済で確定させると為替差益、含み損を確定させると為替差損になります。毎年1月1日から12月31日までのポジションごとの利益と損失を合算した金額が1年分の為替損益というわけです。

FXの利益(所得)が確定するタイミング

FXの利益(所得)が確定するのはポジションを決済したときです。12月31までに決済した損益の合計を1年分の所得とします。その年にエントリーした未決済の取引は含まれません。

②スワップポイントとは

2つの通貨の金利差調整分をスワップポイントといいます。金利の低い通貨を売って金利の高い通貨を買うと、その金利の差額(スワップポイント)を受け取ります。逆に高い金利の通貨を売って低い金利の通貨を買った場合は、その差額を支払わなければなりません(マイナススワップ)。スワップポイントの計上タイミングはFX会社によって異なり、主に「毎日計上」と「決済時に計上」の2種類があります。取引しているFX会社のスワップポイントの計上タイミングを確認しておきましょう。

FX取引で確定申告が必要な例

FXの取引で利益が出た方は、確定申告によって税金を自分で納付します。

FXの年間の損益はFX会社が発行する年間損益報告書で確認できます。しかし、複数の口座を持っている人は、自分で所得を計算しなくてはなりません。ここで、2つの口座で取引をしている例で計算してみましょう。計算の前提条件は以下のとおりです。

  • 国内FX1の為替差益:100万円
  • 国内FX1のスワップポイント:2万円
  • 国内FX2の為替差損:50万円
  • 国内FX2のスワップポイント:1万円
  • 取引手数料の合計:1万円

為替損益(100万円-50万円)+スワップポイント(2万円+1万円)-必要経費(1万円)=52万円

FX取引による所得は52万円なので,確定申告が必要となります。

所得にかかる税金の例

52万円 × 20.315% = 105,638円となります。

FX取引で確定申告が不要な例

まずはじめに、以下のような方は確定申告が不要です。

  • FXを副業として年間所得が20万円以下の方(副業所得20万円の範囲)
  • FXとそれ以外の年間合計所得が48万円以下の方(基礎控除48万円の範囲)

念のため、確定申告が不要な例を見ていきましょう。計算の前提条件は以下のとおりです。

  • 国内FX1の為替差益:100万円
  • 国内FX1のスワップポイント:2万円
  • 国内FX2の為替差損:90万円
  • 国内FX2のスワップポイント:1万円
  • 取引手数料の合計:1万円

為替損益(100万円-90万円)+スワップポイント(2万円+1万円)-必要経費(1万円)=12万円

FX取引による所得は12万円なので、確定申告が不要です。

FX取引の必要経費とは

FXの取引にかかった費用を必要経費として利益から差し引くことが可能です。取引手数料のような費用以外にも、通信費やFXの勉強にかかった支出も計上することができます。ただし、FX取引との関連性が客観的にわかることが必要です。

全額FXの経費にできる費用

下記のような、FX取引そのものの費用や情報取得のための費用は、所得の計算において全額経費とすることが可能です。

  • 取引手数料
  • FX取引についての書籍代
  • FXのセミナー受講費・セミナー参加の交通費
  • FXの情報商材の代金
  • FX取引専用のパソコン代金
  • 自動売買などのソフトウェア代金

経費については必ず領収書をもらい、保管しておくようにしましょう。

一部FXの経費にできる費用

FX取引に使用しているパソコンの購入費や電気料、プロバイダなどの通信費も必要経費として計上できます。ただし、プライベートで使用している割合と、FXのために使用している割合を按分して計上しなければなりません。客観的に見てFXでの使用割合が過大である場合、経費として認められない可能性があります。FXの取引時間を記録するなどの按分の根拠になる資料を準備しておきましょう。

FX取引に関する資料の保管義務とは

確定申告が済んでも、経費の証明に用いる領収書などの書類は捨てずに保管しておきましょう。領収書などは白色申告で5年間、青色申告で7年間保管しなければなりません。税務署に届け出れば電子データで保管することも可能です。

FX取引における確定申告の注意点

ここまでFXの取引で得た利益にかかる税金の基本についてみてきました。その内容を踏まえ、注意すべき点について確認しておきましょう。

利益を出した翌年に高額の住民税が発生する

所得税はその年の所得に対してかかる税金ですが、住民税は前年所得に対してかかります。つまり、多く利益の出た年の翌年の住民税が高額になるということです。翌年も同様に利益が出るとは限らず、納税資金が足りなくなって困ることも考えられます。大きな利益がでたときは、すべて使ってしまわずに納税資金を取っておきましょう。

所得税の納税資金を確保しておくこと

FX取引で利益が確定した場合、翌年に所得税の支払い義務が発生します。納税資金をFX取引に再投資した結果、資金が減っても、翌年の納税額は変わりません。

確定申告後の所得税の納付については、確定申告の申告書に記載した税額を自分で納付します。所得税の納期限は申告期限と同じ3月15日です(土日の場合はその翌日)。所得税の納付方法は次の中から選べます。

  • 口座振替:申告時に申し込む。引き落としは約1ヵ月後。
  • e-Taxのダイレクト納付:e-Taxで届け出た預貯金口座からの引き落とし。
  • クレジットカード:「国税クレジットカードお支払いサイト」から。
  • コンビニエンスストア:QRコードを印刷してコンビニエンスストアで納付。
  • 現金:金融機関または所轄税務署で納付(税務署や金融機関に用意してある納付書に税額を記入)

確定申告が不要でも住民税の申告が必要

サラリーマンや会社員の方で、FXの副業所得が20万円以下のため確定申告不要でも、住民税の申告が必要な点に注意が必要です。

住民税の納付方法は、給与天引きの特別徴収と自分で納付する普通徴収の2種類から選択できます。特別徴収を選択した場合、その年の6月より給与から天引きされます。普通徴収では通常、6月上旬に自身で支払うタイプの納付書が届きます。

過年度分の利益は損益通算できない

FXの損益通算で損失と相殺できるのは、同じ年(1/1~12/31)に発生した利益です。そのため、過去の利益とは損益通算できません。たとえば、大きな利益のあった年の年末に、大きな含み損のあるポジションを決済せずに年を越したとします。年が明けてから損失を確定し、FX口座のお金がなくなってしまったとしても、前年の利益と相殺することはできません。前年の利益に対し高額な税金がかかる場合、納税資金が足りなくなるおそれがあります。1年間の所得が高くなる見通しのときには、納税資金の確保を考えておきましょう。

時期 2021/1/1~12/31 2022/1/1~12/31
利益 1,500,000円  
損失   2,000,000円
かかる税金(20.315%) 304,725円 (納税資金) なし

上図のように翌年が赤字でも、前年の利益に対して税金がかかるため、利益の多い期中に別ポジションの含み損を決済することが望ましいケースがあります。

時期2021/1/1~12/312022/1/1~12/31
利益1,500,000円 
損失1,500,000円(利益にかぶせて含み損を決済する例)500,000円
かかる税金(20.315%)なしなし

このように、利益が出て税金が増える場合、あえて含み損を決済するやり方もございます。

国内FXと海外FXの税制上の特徴

国内口座のFXと海外口座のFXでは税制が異なります。仮に国内FXと海外FXの取引でそれぞれ100万円の利益になっても、税額が異なる点に注意が必要です。

国内FXにかかる税金とは

国内FXで得た所得は、「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税という方式で課税されます。申告分離課税とは給与所得など、他の所得とは合算せずに、その所得だけに税率を掛けて税金を計算する方法です。所得金額がいくらであっても、一律20.315%の税率が適用されます。税率が一定なので、累進課税の不動産所得や事業所得でたくさん稼ぐよりも有利になります。

さらに以下のような、2つのメリットもあります。

損益通算が適用される

FXのように先物取引に係る雑所得等は、同じ所得の間で損益通算が可能です。損益通算とは、一定期間の取引の利益と損失を相殺することです。たとえば、国内FXで50万円の損失があり、日経225先物で100万円の利益(先物取引に係る雑所得等に該当)があったとします。その場合の先物取引に係る雑所得等の金額は50万円(100万円-50万円)となるのです。利益から損失を差し引くことで所得金額が少なくなり、かかる税金を軽減できます。

損失の繰越控除が適用される

損益通算をしてもなお、控除しきれない損失が残った場合は、翌年以降3年間繰り越して損益通算が可能です(繰越控除という)。繰越控除は確定申告によって適用可能となり、3年の間に損益通算できない年があっても、確定申告を継続して行う必要があります。

海外FXにおける税金とは

海外FXの所得は「その他の雑所得」に分類され、総合課税が適用されます。総合課税とは、給与所得などの他の所得との合計に対し、金額に応じた税率を掛ける方式です(累進課税となる)。所得税の税率は国税庁のページで確認できます。

国内FXよりも税金が高くなる

海外FXは所得が多くなると税率も高くなります。そのため、FX以外の所得(給与や不動産所得など)が高い方やFXの利益が多い方には、税率が一律20.315%の国内FXのほうが有利です。

合計所得金額が330万円を超える場合

FXの所得や給与所得、不動産所得などの合計所得が330万円を超えると、所得税と住民税の税率が約30%となり、国内FXの20.315%より高くなります。目安として年間の合計所得金額が330万円を超える方は、税金面では国内FXを選ぶとよいでしょう。年間の合計所得金額が330万円以下の方は、海外FXが有利です。

損益通算の範囲が狭い

海外FXの利益は、国内FXの利益とは損益通算できません。しかし、仮想通貨の利益など総合課税の雑所得(公的年金や副業の雑所得)の中での損益通算は可能です。損益通算をしてもなおマイナスが残る場合でも、総合課税の雑所得は繰越控除を適用できません。

FX取引における確定申告のやり方

FX取引に関する確定申告は難しくありません。これまで解説した所得金額を用いて申告書を作成します。

年間損益報告書を準備する

申告書の作成にあたり、税額を計算するための資料を準備します。FXの所得計算にはFX会社が発行する「年間損益報告書」が必要です。年間損益報告書はFX会社提供の取引ツールなどからダウンロードできます。FX以外に給与所得などがある方は源泉徴収票(勤め先からもらえる)などを準備します。

確定申告書の作成

ここでは、国税庁のウェブサイト「確定申告書作成コーナー」を利用した申告書の作成方法を解説します。スマートフォンからも作成可能です。

FXの所得の入力(海外FXの場合)

海外FXの所得がある人は、「収入金額・所得金額の入力」ページの「総合課税の所得」欄の「雑所得・その他」から「雑(その他)所得の入力」ページに遷移します。収入金額に1年間の利益の合計、必要経費に経費の合計を入力します。

FXの所得の入力(国内FXの場合)

国内FXの所得がある人は、「収入金額・所得金額の入力」ページの「分離課税の所得」欄の「先物取引に係る雑所得等」から「先物取引に係る雑所得等の入力」ページに遷移します。海外FXと同様に収入金額、必要経費を入力します。繰越損失がある人は、このページの下段で入力が可能です(繰り越している期間中は利益がない年でも申告が必要です)。

他の所得、所得控除・税額控除の入力

FX以外の所得がある人は、「収入金額・所得金額の入力」ページで入力しましょう。所得控除や税額控除は以降のページで入力できます。

税額の確認・修正

「計算結果確認」ページで税額を確認します。訂正したいときはこのページから内容の修正が可能です。

住民税の徴収方法の選択

「住民税等入力」ページから、「住民税・事業税に関する事項の入力」ページに遷移します。上段の「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」欄で「特別徴収(給与天引き)」「自分で納付」のどちらかを選びましょう。

住所・氏名・マイナンバーなどの入力

最後に氏名・住所・生年月日、マイナンバーを入力すれば申告書の完成です。

まとめ

FXで利益が出ると、所得税・住民税がかかります。大きな利益が出ると税額も高額になるため、納税資金が不足しないように注意しましょう。また、取引の仕組みが複雑なため、税金の計算や節税の方法がよくわからず、余分に税金を納めるケースも考えられます。税金について不安な方は、早めに税理士に相談することをおすすめします。

ZEY株式会社 税務部門監修

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