相続税の節税方法を財産別に税理士が解説します

自分もしくは親が高齢になると、相続を意識する人が増えてきます。相続税がかかるかまだわからない人も、明らかに相続税がかかることがわかっている人も、相続税を抑えたいと考えるでしょう。相続税対策は、個々の財産の持ち方などで異なります。この記事では、財産の種類別の相続税対策を解説しますので、参考にしてください。

相続対策を早く始めるべき理由

相続対策を成功させるには、できるだけ早く始めることが大切です。なぜ早く始めるべきなのかを解説していきます。

取れる手段が増える

相続対策には短時間で大きな節税効果を得られるものもあれば、効果が出るのに時間がかかるものもあります。利用できる対策はできるだけ利用し、支払う相続税を抑えたいところです。早く取り掛かるほど対策の選択肢が増えるので、なるべく早く始めるようにしましょう。

節税金額が増える

少しずつコツコツ税金を減らす対策の場合、年数が増えるごとに節税金額も増えます。そのためには、1日も早く相続対策を始めるべきなのです。

相続税がどのくらいかかるか事前に分かる

相続税がかかる、もしくはかかるかもしれない人は、被相続人が健康なうちに税理士に相続税の試算をしてもらいましょう。相続税のおおよその金額によって対策の選択肢も変わってきます。

財産の所在が分かる

相続財産が全体でいくらなのか、どのような財産があるのかは被相続人しかわかりません。相続が発生してから、相続人が知らなかった財産が発覚するのはよくあることです。10カ月以内に相続税の申告と納税をしなくてはならないという時間的な制約の中で、対策を講じることは困難といえます。相続対策を始める際には全財産の把握が必要です。

主な財産を把握する

相続対策を始めるにあたり、被相続人の財産の種類や評価額を調べて、おおよその相続税額を試算しておく必要があります。想定される相続税に対して納める現預金がない場合や、相続税がかかるかどうかが微妙な場合など、状況によって対策も変わってくるのです。以下のような財産を調べ、一覧表にしておくとよいでしょう。

預貯金

預貯金については、まず口座のある金融機関だけでも親族がわかるようにしておきましょう。相続だけでなく被相続人が認知症などになった場合に、親族が医療費などの必要なお金を下ろせないと困ることになります。

株式・投資信託などの有価証券

預貯金以外に株式や投資信託を持っていないかも確認しておきましょう。通常は金融機関が年1回以上発行する「取引残高報告書」で銘柄名・取得費・現在の評価額などがわかります。ネット証券などは紙の書類を発行しない会社が多いので、インターネットサービスなどで確認しましょう。

生命保険

生命保険の保険金は契約の形態によって、かかる税の種類が異なります。

契約形態税金
契約者=被保険者
例)契約者:夫
被保険者:夫
受取人:妻
相続税
契約者=受取人
例)契約者:妻
被保険者:夫
受取人:妻
所得税
契約者≠被保険者≠受取人
例)契約者:妻
被保険者:夫
受取人:子
贈与税

保険証券を紛失した場合は、保険会社に再発行してもらえます。生命保険契約において、被保険者以外の変更は可能です。相続発生前に契約内容を確認し、必要であれば契約者や受取人の変更をすませておきましょう。

不動産

自宅以外に不動産がある人は、年1回送付される「固定資産税課税明細書」で所在地と固定資産税評価額を確認できます。固定資産税課税明細書は市区町村ごとに作成されるため、複数の市区町村に不動産を所有する場合はもれなく把握しておきましょう。

借入金

相続というとプラスの財産をイメージしますが、借入金やローンなどのマイナスの財産も相続財産となります。マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合は、相続放棄も検討しなければなりません。相続放棄ができるのが相続発生後3カ月以内なので、生前に借入についての次のような内容を確認しておきましょう。

  • 借入先
  • 借入残高
  • 返済方法
  • 返済期限
  • 担保・保証人の有無

相続財産で異なる相続税の節税方法とは

「財産が不動産に偏っている」「現預金と有価証券に分散されている」など、財産の状況は人それぞれです。占める割合の多い財産の種類によって、相続税対策が異なります。ここでは、財産の種類別の節税方法を紹介します。 

現金が多い場合に相続税を節税する方法

財産のうち現預金(もしくは上場株式など)の占める割合が多い場合は、主に生前贈与を活用して相続財産を生前に減らす方法が有効です。また、いわゆる「タンス預金」のようにお金を自宅に保管しておけば、税務署に見つからないと考える人がいます。しかし、税務署の調査が入った場合、入出金の履歴と現預金の残高のつじつまが合わないと、ほぼ確実に発覚します。節税は合法的なやり方で行いましょう。

現金が多い場合の相続税対策① 暦年贈与

贈与税の受贈者(贈与を受ける人)ごとの基礎控除額は1年あたり110万円です。年間110万円までの贈与には贈与税がかかりません。ただし、毎年同じ金額を贈与すると暦年贈与と認められず、贈与した合計金額に対して課税されるおそれがありますので注意してください。

また、110万円を超えて税金を負担するほうが税負担を抑えられるケースもあります。たとえば、1年間の贈与額が300万円だったとします。この場合の贈与税額は19万円((300万円-110万円)×10%)です。300万円に対する実際の税金の負担率は約6.3%(19万円÷300万円×100)になります。相続税の最低税率は10%なので、300万円ならば贈与税がかかっても贈与したほうが有利なのです。現預金が多い人は贈与税を払いながら財産を相続人に移転することも検討してみましょう。

現金が多い場合の相続税対策② 結婚、子育て資金の贈与

父母や祖父母が、子や孫の結婚・子育て資金を一括贈与すると1,000万円までが非課税となる制度が「結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例」です。この特例は2021年(令和3年)に改正され、2023年(令和5年)3月31日まで延長されることになりました。この特例を利用するには、金融機関に専用口座を開設する必要があります。制度の対象となる資金の使途は以下のようなものです。

結婚費用(300万円まで)
  • 挙式費用、衣装代等の婚礼費用
  • 家賃・敷金等の新居費用
子育て費用
  • 不妊治療・妊婦検診の費用
  • 分娩費等出産に関する費用
  • 子の医療費、幼稚園・保育園の保育料

受贈者が50歳になるとこの特例は終了し、口座の残高には贈与税がかかります。また、贈与者が亡くなった場合も特例の適用が終了し、口座の残高は相続税の対象となることに注意してください。

現金が多い場合の相続税対策③ 教育に要する資金の贈与

教育資金贈与とは、子や孫に対して教育資金を贈与する場合、1,500万円までが非課税になる制度です。この制度も結婚・子育て資金の一括贈与と同様に2021年(令和3年に改正され、2023年(令和5年)3月31日まで延長されることになりました。また、制度の利用には金融機関に専用口座を開設する必要があります。制度の対象となる資金の使途は以下のようなものです。

学校等にかかる費用(1,500万円まで)入学金・授業料・修学旅行費・パソコンなどの教材費
学校「以外にかかる費用(500万円まで)学習塾代・習い事代など

受贈者が30歳になるとこの特例は終了し、口座の残高には贈与税がかかります。また、贈与者が亡くなった場合も制度の適用が終了し、口座の残高は相続税の対象となります。

現金が多い場合の相続税対策④ 住宅取得等資金の贈与

「住宅取得等資金の贈与税の特例」は、20歳以上の子や孫へ住宅資金の贈与の一定額まで非課税となる制度です。この制度は2021年(令和3年)12月31日までの住宅取得の契約が対象になります。この特例による贈与は、相続発生前3年以内の贈与がなかったことになるルールが適用されません。

非課税限度額は以下のとおりです。

 消費税10%の場合消費税10%以外の場合
省エネ住宅1,200万円800万円
省エネ住宅以外700万円300万円

贈与を受けた翌年の3月15日までに住宅の引き渡しを受け、確定申告も済ませなければならないことに注意しましょう。

現金が多い場合の相続税対策⑤ 生命保険金等の非課税枠

生命保険の保険金は「500万円×法定相続人の数」までが非課税になります。現預金で持つと相続税が課税されるところを、生命保険の保険料として支払うことで非課税にできるのです。また、生命保険では受取人を指定できるので、引き継がせたい人に財産を渡せます。相続人が納税資金として活用できることも生命保険のメリットです。

現金が多い場合の相続税対策⑥ 賃貸用不動産の購入

現預金の資産が多くて相続税がかかる人は、賃貸用不動産の活用も選択肢となります。相続税の評価において、現預金より不動産、自用の不動産より賃貸用不動産のほうが低い評価になるからです。現金で賃貸アパートやマンションを購入すれば、時価より低く評価されるので有効な相続税対策になります。ただし賃貸経営がうまくいかないと、相続税の節税以上の損失を被る可能性があることに注意が必要です。

賃貸不動産が多い場合に相続税を節税する方法

相続対策として賃貸経営をしている場合でも、納税資金の不足や賃貸経営の収益による財産の増加などの問題が生じることがあります。

不動産が多い場合の相続税対策① 新設法人への売却

賃貸経営が順調だったり、規模が大きくなったりすると賃料収入により相続財産が増えて相続税が高額になる可能性があります。その場合、不動産管理会社を設立し、その法人へ不動産を売却する方法があります。法人が不動産を所有することにより、賃料は法人の収益になりますので、被相続人に対する現金の増加を減らし、所得税も抑えられます。さらに、法人からオーナーや子が役員報酬を受け取ることで賃料収入の分散も可能です。相続人が役員報酬を受け取ることで将来発生する相続税に対する納税額の確保も可能となります。

この仕組みでは、設立した会社の株式にも相続税がかかるため、子や孫を株主として設立する、または生前に子や孫に株式を贈与するなどの検討が別途必要です。

未上場株式がある場合に相続税を節税する方法

未上場で業績が良好な法人オーナーの場合、株式の評価が高く、相続対策が必要な場合が少なくありません。株式の評価が上がる前の贈与や、評価額の引き下げが主な対策となります。

未上場株式がある場合の相続税対策① 相続時精算課税制度の利用

「相続時精算課税制度」とは、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子や孫への贈与で暦年贈与との選択により利用できる制度です。この制度を使うと2,500万円までの贈与には贈与税はかかりませんが、贈与者が亡くなったときに相続財産と贈与財産を合算して相続税を計算し直します。相続税がかかる人にとっては課税の繰り延べにすぎません。ただし、贈与時から相続発生時の間に価値が上がる財産の受け渡しにはメリットがあります。相続時に加算される贈与財産の評価額は、贈与時点での評価額だからです。たとえば、相続時精算課税制度を利用して父が子に2,500万円相当の未上場株式を贈与したとします。父が亡くなったときにその株式の評価額が5,000万円になっていたとしても、相続税評価額は2,500万円のままというわけです。

未上場株式がある場合の相続税対策② 退職金を支給する

同族会社などの未上場株式の評価を下げるには、法人純資産額を圧縮することが有効です。法人純資産額の引き下げには、役員退職金の支給などが考えられます。また、会社が支払う役員退職金が死亡退職金であれば、相続人にとっては相続財産です。死亡退職金は「500万円×法定相続人の数」までは非課税で受け取れます。

その他、相続税を節税する方法

ここでは、どのようなケースでも活用できる相続税対策を紹介します。他の方法と併用できる場合は併用して、相続税を抑えましょう。

その他の相続税対策① 墓石仏具を生前に購入

お墓などの祭祀財産(墓地・墓石・仏壇など)は相続税の非課税財産とされています。被相続人が生前にお墓などを買って現預金を減らすことは有効な相続税対策です。ただし、相続発生後に相続人がお墓を購入した場合は、非課税にはなりません。また、生前に組んだローンの残債は債務控除が認められていません。お墓や仏壇は生前に現金一括で買っておきましょう。

その他の相続税対策② 同居する

自宅不動産の相続において相続発生前から相続人が同居してそのまま住み続けるなら、「小規模宅地等の特例」が適用される可能性があります。特例の適用要件を満たした場合、自宅の敷地の評価額を8割下げることができます。

その他の相続税対策③ 養子縁組

孫などを養子にして法定相続人を増やすと、相続税の基礎控除額(3,000万円+(600万円×法定相続人の数))が増えて相続税を抑えられます。法定相続人の人数が増えると、生命保険と死亡退職金の非課税額も増えるので、有効な相続対策です。ただし、養子縁組によって法定相続人にできる人数は、実子がいる場合は1人まで、いない場合は2人までとなっています。また、孫が養子になった場合は、相続税の2割加算の対象になることにも注意が必要です。

相続税の節税対策・相続発生後に有効な対策とは

相続税対策は相続発生前に時間をかけて行うべきですが、相続発生後でもできる対策もあります。

相続発生後に有効な対策① 分割案の検討

遺産分割の前には必ず相続財産の内容や評価額、何も対策をしない場合の相続税を計算します。相続人の中に配偶者がいる場合、相続税から1億6,000万円か法定相続分相当額のどちらか多い方の金額を差し引けます。相続人の中に20歳未満の方がいるときは、未成年者控除として「(20-相続開始時の相続人の年齢)×10万円」を税額から差し引くことが可能です。また、85歳未満の障害者がいる場合、障害者控除が適用できます。障害者控除は、対象となる相続人の障害の等級などによって一般障害者と障害者に区分されます。それぞれの税額控除は以下のとおりです。

  • 一般障害者:(85-相続開始時の相続人の年齢)×10万円
  • 特別障害者:(85-相続開始時の相続人の年齢)×20万円

これらの税額控除の活用を頭に入れて遺産分割の仕方を検討します。分割にあたっては、二次相続も含めたトータルの相続税納税額の軽減につながるように考えることが重要です。

相続発生後に有効な対策② 支払いの領収書を保管

相続が発生したら、被相続人の医療費や葬儀費用、清算した公共料金・電話料金・税金・社会保険料などの領収書をまとめておきましょう。申告時に控除する分の証拠になる領収書がない場合、申告できず、相続税が増えることになります。

まとめ

相続税の節税対策には多くの手法があり、早く始めるほど選択肢も多く、大きな効果が期待できます。しかし、やり方によっては逆効果だったり、相続人間の公平性を欠いてトラブルにつながったりすることも少なくありません。相続税の節税対策を検討すると、どの対策が自分に合うかわからないことや、やろうと思っていることの効果に確信が持てないこともあるでしょう。そのような場合は、早めに相続税の節税に精通した税理士に相談することをおすすめします。

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