事業譲渡にかかる税金は?売却側・買収側双方の手続きやコストも解説

事業譲渡には全部譲渡と一部譲渡があります。当記事では、法人、個人の別に事業譲渡に際して発生する税金や手続き、コストを解説します。    

事業譲渡とは?株式売却(譲渡)との違いは?

事業譲渡の概要について説明します。

事業譲渡とは?

事業譲渡とは、事業の一部または全部を任意の第三者に譲渡することをいいます。事業売却と表現されることもありますが、一般的には同じ意味で使用されます。会社形態の組織(法人)が一部または全部の事業を譲渡する場合と、個人事業主が一部または全部の事業を譲渡する場合があり、両者で課税関係は異なります。

事業譲渡と株式売却(譲渡)との違いは?

会社が事業の全部を売却する場合に、株式売却という方法をとることがあります。株式売却とは、その名のとおり、株式会社の株式を売却することで、会社の経営権を任意の第三者に譲渡する方法です。

事業譲渡との一番の違いは、会社の株主(所有者)が変わるかどうかという点です。事業譲渡は、事業については第三者に売却しますが、会社の株主自体は変わらないため、会社の所有者は元の株主のままです。一方で、株式売却の場合、事業だけではなく、会社自体の所有者が新たな株主へと変わります。

事業の譲渡側(売却側)にかかる税金は?

事業を譲渡する側(売り手)にかかる税金について、法人、個人の別に説明します。

【法人の場合】譲渡益に法人税がかかる

法人が事業譲渡を行った結果、譲渡益が発生する場合には、その譲渡益に対して法人税が発生します。譲渡益は、事業の売却価格が、譲渡する資産や負債の帳簿価額を上回る部分であり、具体的には、以下の算式で算定されます。

譲渡益=売却価格-譲渡対象物の帳簿価額(譲渡資産-譲渡負債)

また、譲渡益に対しては法人税のほかに、法人の事業税や住民税も発生します。そのため、譲渡益に対して実際に発生する税金は、譲渡益に実効税率である30%〜35%程度を乗じた金額が目安になります。なお、事業の売却価格が譲渡する資産や負債の帳簿価額を下回り、譲渡損が発生するようなケースでは、逆に減税効果が期待できます。

【個人事業主の場合】譲渡益に所得税などがかかる

個人事業主が事業を譲渡して譲渡益が発生する際には所得税が課税されます。譲渡する資産が商品など棚卸資産や金銭債券の場合は総合課税の事業所得や雑所得、その他の資産(事業用車、著作権など)の場合は総合課税の譲渡所得、不動産の場合は分離課税の譲渡所得として、所得税が計算されます。

また、総合課税の所得に対しては、所得税以外にも住民税や個人事業税等がかかるほか、国民健康保険に加入している場合は、保険料が高くなる場合があります。譲渡益に対する税率は、総合課税に対する所得税は課税所得(=収入-経費-所得控除等)に対して5%~45%となり、住民税は約10%が適用されます。

消費税の納税義務がある

事業を売却した場合、一般に消費税の納税義務が生じることにも留意が必要です。消費税は間接税であり、実際に税負担が生じるのは買い手ですが、売り手に納税義務が生じるため、事業の売り手は消費税を徴収して税務署に納付しなければなりません。事業譲渡において、消費税の納税義務が生じるのは、売却資産のなかに課税対象資産が含まれる場合です。

主な課税対象資産と非課税資産は以下の通りです。

課税対象資産:建物・設備、棚卸資産、ソフトウェアなど
非課税資産:土地、有価証券、債権など

なお、土地などの非課税資産の売却額が多額となる場合には、課税売上割合(全体の売上高に占める消費税が課される売上の割合)が小さくなり、通常よりも消費税の納付額が増加する場合がある点にも注意が必要です。

売上5億円超の会社では、課税売上割合に応じて仕入税額控除(預かった消費税から支払った消費税を控除すること)が決まり、消費税の納付額が算定されますが、課税売上割合が低下した場合、それに伴って消費税の納付額が増加する可能性があります。

事業の譲受側(買収側)にかかる税金は?

続いて、事業を譲り受ける側(買い手)にかかる税金について解説します。

消費税がかかる

株式譲渡の場合には消費税は発生しませんが、事業譲渡により事業を買収した場合は、購入した資産に消費税の課税対象となる資産があれば、消費税を負担することになります。
上記で解説のとおり、課税対象資産は、建物・設備、棚卸資産、ソフトウェアなどで、非課税となる資産は、土地、有価証券、債権などです。事業の購入価格の交渉の際には、課税対象資産がどのくらいあるかを把握したうえで、消費税を含めた実際の要支払額がいくらになるのか検討する必要があります。

登録免許税、不動産取得税がかかる

買収した資産に不動産が含まれる場合は、通常購入した場合と同様に不動産取得税と登録免許税がかかります。不動産取得税は、土地や建物などの不動産を購入、贈与、建築などで取得した場合にかかる税金であり、固定資産税評価額に対して原則4%が課税されます。登録免許税は、不動産の登記書換えに際してかかる税金であり、不動産の売買の場合、固定資産税評価額に対して原則2%が課税されます。

のれんによる節税効果が見込まれる

事業の買収には消費税や不動産取得税、登録免許税などがかかる一方で、法人税や所得税等の節税効果を期待できる場合があります。事業の買収価格が譲り受ける資産等(資産 – 負債)の時価を上回る場合、その上回る金額について、「のれん(営業権)」という資産を貸借対照表に計上します。のれんは、5年間で均等に償却して費用(損金)に計上できるため、利益(所得)を圧縮することができ、法人税や所得税等を減らす効果があります。

事業譲渡にかかる手続きやコスト

事業譲渡には様々な手続きやコストがかかります。売り手側と買い手側のそれぞれについて解説します。

事業の譲渡側(売却側)の手続きやコスト

取引先や従業員への説明

事業を売却した場合、事業を経営する会社が変わってしまうため取引先や従業員への説明が必要になります。同意が得られない場合、事業譲渡自体を断念する必要があることにもなりかねませんので、取引先や従業員への告知のタイミングや説明の方法には細心の注意を払い、告知や説明を行うことが求められます。

専門家費用

事業譲渡を行う場合、事業に関わる資産や負債のどこまでを譲渡の対象とするか決定し、適切な売却価格を設定する必要があります。事業の規模にもよりますが、売却する事業の価値を第三者である専門家に算定依頼することで、売却交渉を有利に進めることが可能となる場合もあります。
また、事業譲渡で譲渡益が発生する際は、上記で説明したとおり、会社の場合には法人税等がかかり、個人の場合には所得税等がかかります。税金の負担額は、譲渡対象とする資産や負債の範囲や金額によっても変わってくるため、税理士等の専門家に相談した方が適切なことがあります。
いずれにせよ、専門家に依頼する場合には、専門家へ支払う費用が発生します。

株主総会の決議

株式会社の場合、重大な事業譲渡を行う際には原則として株主総会の特別決議が必要です。また、事業譲渡に反対する株主には、自身が保有する株式の買取を会社に請求する権利が保証されているため、反対株主が買取請求を行った場合には、それに応じ株式を買い取る必要があります。    

事業の譲受側(買収側)の手続きやコスト

契約内容の見直し・締結、名義の変更手続き

事業を買収した場合、事業を営む会社(名義)が変わるため、その事業に関連する取引先や賃貸物件の貸主等との既存の契約内容を見直したうえで、新たに締結しなおさなければなりません。また、事業に関連する従業員も受け入れる場合には、新たに雇用契約を締結するなどの手続きも必要となります。

事業許認可の再取得 

事業を行うために許認可が必要な事業を買収した場合、事業の許認可をそのまま引き継ぐことはできないため、再度取得しなければなりません。そのため、許認可の取得に時間がかかってしまうケースや登録免許税や専門家に支払う費用が発生する場合もあるので、事前に確認しておく必要があります。

まとめ

事業譲渡には、様々な税金や手続き、コストが関連します。法人か個人か、買い手か売り手か、譲渡する資産の内容等によっても必要な税金やコスト等は大きく異なってきます。事業の譲渡契約を締結した後に、想定していなかった税金やコストがかかってしまったといったことがないように、事前に慎重に検討を行ったうえで、事業譲渡を決定する必要があります。

税理士法人監修

節税・税金対策に強い専門家へお任せください。