飲食店を法人化するタイミングは?法人成りのメリットは?
個人事業主として飲食店を経営している方向けに、法人化するタイミングと法人成りするメリットを解説します。
飲食店が法人化を検討するタイミングとは?
- 年間の所得が330万円を超えるタイミング
- 消費税の課税事業者になるタイミング
- 節税対策を行うタイミング
年間の所得が330万円を超えるタイミング
年間の所得が330万円を超えるタイミングに必ず法人化すべきとは言い切れませんが、法人成りを検討する良いタイミングです。単純に個人事業主と法人の税率を比較すると、年間の所得330万円に対して個人の所得税は20%かかり、資本金1億円以下の法人は法人税が15%となります。
個人事業主は所得が増えれば増えるほど税率も高くなる仕組み
個人事業主の所得税は累進課税が適用され、以下のように税率が高くなります。
個人の所得 | 税率 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% |
40,000,000円 以上 | 45% |
法人税は一定の税率で収まる
法人の所得 | 税率 |
年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超の部分 | 23.20% |
所得税と法人税を比べて法人化を判断するわけではありませんが、所得が330万円以上になるタイミングで法人成りのシミュレーションを行い、いつどのようなタイミングで法人化するのか、事前に判断基準を決めておくことが大切です。急な売上増加は予測がつかないものです。個人の場合、所得が上がるにつれ所得税が増えてしまうため、今年中に所得が400万円を超えたらで法人化を行うという計画を立てておくことで、法人へ売上を計上し、高い所得税率から一定の法人税率へシフトさせることが可能になります。
消費税の課税事業者に切り替わるタイミング
飲食店を開業後、年間の課税売上高(消費税がかかる売上)が1,000万円を超えると、2年後に課税事業者として消費税を納税する義務が発生します。課税事業者になるとお客様へ請求した消費税10%を自分のポケットに入れることができなくなります。しかし、課税事業者が法人化した場合、再度2年のあいだ、免税事業者に戻るため消費税をポケットに納めることが可能になります。
節税対策を行うタイミング
節税対策を行うタイミングとは、たとえば
- 自宅の家賃を法人の経費で落とす
- 事業所得から給与所得にして控除額を増やす
- 会社から退職金を受け取る
などの対策が考えられます。
家賃を法人の経費で落とす節税対策とは
個人事業主の場合、事業に直接関係のない自宅の家賃を経費にすることは認められません。しかし、法人の場合、自宅を法人契約することで社宅化し、その社宅を自身に貸し付けることで、社宅の家賃を法人の経費で支払うことが可能になります。
給与所得にして控除額を増やす節税対策とは
個人事業主の場合、基礎控除と青色申告特別控除という制度で所得を減らすことが可能です。一方で法人の場合、基礎控除と給与所得控除が使えるようになり、青色申告特別控除の最大65万円に対して、給与所得控除は(給与の額によりますが)最大195万円まで増加します。
会社から退職金を受け取る節税対策とは
個人事業主の場合、退職金を自身に支払うことはできません。しかし法人の場合、会社から自身に退職金を支払うことが認められます。自身へ役員報酬を支払うよりも退職金を支払うほうが税金面で有利になります。
800万円を役員報酬で受け取る場合(所得税+住民税のみ考慮) | 800万円を退職金で受け取る場合(勤続年数を20年) |
6,736,500円 | 8,000,000円 |
自身の会社に20年間勤め、退職金800万円を受け取る場合、税金がかかりません。
飲食店が法人成りするメリットとは?
個人事業主の飲食店経営者が法人成りする主なメリットは以下の通りです。
- 税率を一定に保てる
- 社会的信用度が増す
- 自宅を社宅にして家賃を経費にする
- 消費税の免税事業者になる
- 勤続年数に応じて退職金を支払える
税率を一定に保てる
個人事業主の場合、所得の額に応じて税率が最大45%まで上がります。一方で法人の税率は資本金1億円以下の中小企業であれば最大23.20%に収まります。
社会的信用度が増す
飲食店はお客様商売のため個人か法人か問われる機会は少ないかもしれません。しかし、仕入先や金融機関等の企業間取引においては、やはり法人のほうが信用してもらいやすくなります。法人が信用される理由としては、法人を登記した際に登記簿謄本という会社の所在地や代表者の住所等が記された証明書を誰でも閲覧できる点にあります。
自宅を社宅にして家賃を経費にできる
上記の節税対策でも触れましたが、自身の物件を法人契約することで法人が役員に住居を貸し出していることにできます。個人事業主の場合、事業に関係ない自宅の家賃を経費に算入できませんが、法人が契約している社宅の家賃は経費に計上できます。※役員は一部家賃の負担が必要です。
消費税の免税事業者に戻る
個人事業主で年間1,000万円売上がある場合、2年後から課税事業者として消費時の納税義務が発生します。しかし、法人成りすることで免税事業者に戻りますので、最長2年間の消費税をポケットマネーにすることが可能になります。
勤続年数に応じて退職金を支払える
退職金とは、会社の役員を辞める際に自身に支払えるお金です。退職金は分離課税(他の所得と分けて課税される仕組み)のため、あまり税金がかからない所得です。たとえば20年務めたうえで800万円を退職金にする場合、税引き後のキャッシュが800万円残ります。もしも800万円を事業所得で稼ぐ場合、税引き後のキャッシュが550万円くらいまで減ってしまいます。退職金は勤続年数が増えれば増えるほど控除される額が増えるため、早めに法人化しておき、できるだけ多くの勤続年数を稼ぐことがポイントです。
飲食店を法人化するタイミングとメリットまとめ
飲食店を法人化するタイミングは
- 年間の所得が330万円を超えるタイミング
- 消費税の課税事業者になるタイミング
- 節税対策を行うタイミング
飲食店を法人成りするメリットは
- 税率を一定に保てる
- 社会的信用度が増す
- 自宅を社宅にして家賃を経費にする
- 消費税の免税事業者になる
- 勤続年数に応じて退職金を支払える
となります。
法人化は事前にシミュレーションを行い、必要な物を準備しておき、流れを把握しておくことが重要です。飲食店経営で利益が出ている方は、法人成りすべきタイミングを逃さないように事前にシミュレーションを依頼しましょう。