脱税とは?節税や申告漏れとの違いは?なぜバレるのか元職員が解説
「独自の判断で行った節税対策が脱税にならないか」「申告を過少に行ってしまったがこれは脱税なのではないか」と不安になる経験はありませんか。
実は「節税」と「脱税」は全く意味が異なり、また誤って過少に申告してしまった場合も脱税には該当しないのです。
当記事では、脱税の概要やペナルティ及び、誤って申告した際の対処法などを記載しております。
「 脱税」とはどのような状態を言うのか
多くの人は「脱税」という言葉の明確な意味を把握していないでしょう。
それでは「脱税」とはどのような状況を言うのでしょうか。
脱税とは「納めるべき税金を不正な手段で意図的に逃れること」
税金を過少に申告した行為全てが脱税になるというわけではありません。
脱税とは、納めるべき税金を「不正な手段」を用いて「意図的に」逃れることを言います。
つまり、不正な手段を用いずに税金を減らす行為や、税金を逃れる意図がなく誤って過少に申告した場合などは脱税には該当しないのです。
「脱税」と「節税」は別物
「脱税」とよく似た言葉に「節税」という言葉がありますが、これらは異なる意味を持つ言葉です。
「節税」とは「税法が想定する範囲において、発生する税金を抑える行為」を言います。
例として「青色申告を行う」「光熱費や家賃を按分して費用計上する」などが該当します。
これらは、税金を抑えるための行為ですが、特段不正な手段を用いているわけではないため、脱税には該当しません。
「申告漏れ」は脱税ではない
一般的に「申告漏れ」とは、税金から逃れるという意図はなく、費用を過大に申告する、もしくは売上を過少に申告するなどで、結果的に過少申告となっている場合を指します。
意図的ではないため、意図的に行われる脱税とは異なった意味で使用されます。
つまり「申告後に更に収入があることが判明した」「費用計上できない物を費用計上していた」というだけで直ちに脱税になる事はないという事です。
しかし脱税ではないにしろ、適切に申告を行っていなかったペナルティが発生してしまう場合があるという点は脱税と共通しています。
脱税はどのような手段で行われるのか
それでは、脱税を行う人はどのような手段を用いて税金から逃れているのでしょうか。
ここでは脱税はどのようにして行われるかを解説します。
収入を過少に計上する
税額は課税所得に税率を掛けて求めます。
課税所得とは「総収入(総売上)-必要経費(仕入や店舗家賃等)-所得控除(社会保険料等)」を指します。
つまり、収入を少なく申告すれば税額も少なくなるという事です。
例えば、課税所得が100万円の場合、税額は5万円となります。(課税所得194.9万円までの税率は5%のため)
しかし、売上を50万円過少に計上し、課税所得を50万とすると税額は2.5万円となるのです。
このように「収入を過少に申告することで税金から逃れる」という脱税の手段があります。
なお、本来「課税所得×税率」の金額に「特別復興所得税」の2.1%を乗じますが、説明の都合上省略しています。
経費を水増しして計上する
前述した「課税所得」が多ければ多いほど、税額も増えます。
つまり、必要経費が多ければ多いほど課税所得は減少し、税金は安くなるという事です。
これを利用して「必要経費を過大に計上する」事によって課税所得を減らし、税金を逃れるという人がいます。
具体的には「仕入額を水増しして計上する」「実際は行っていない出張の交通費や宿泊費を計上している」などが挙げられます。
申告自体を行わない
中には、申告義務があるにも関わらず申告を行わないような人もいます。
これも税金を逃れる目的で意図的に行っているのであれば脱税に該当します。
そして、税額を過少に申告するよりも重いペナルティが発生してしまうのです。
また、税務署でも無申告者に対しての調査を積極的に行っているため、発覚する可能性が非常に高いと言えるでしょう。
脱税はなぜバレるのか
「税金を過少に申告していてもバレなければいい」と考えている人もいるでしょう。
しかし、多くのケースでは税務署に発覚されるのです。
ここでは「脱税はなぜバレるのか」を解説します。
取引先の情報からバレる
脱税が発覚する際「取引先の情報から芋づる式に発覚する」というケースが多いです。
例えば、自身が過少に申告している場合であっても、取引先は「○○にいくら支払った」という情報を申告の際に税務署へ提出しています。
ここで不自然な差額が発生すると、調査に着手する場合があるのです。
また、自身の取引先に調査が入った際、帳簿等が隅々まで確認されます。
その際に持ち帰った情報から、芋づる式に調査の着手に至ることもあります。
銀行口座の動きからバレる
国税の職員は非常に強い権限を持っており、正当な目的がある場合、銀行口座の確認も可能です。
自身の口座が調べられていないとしても、取引先の口座からの入金、もしくは取引先への出金を確認されることがあります。
その際に、不自然な金銭が動いていることが確認された場合、調査に踏み切るというケースがあります。
タレコミからバレる
国税組織は課税漏れ及び徴収漏れに係るタレコミを募集しています。
「取引先の金払いが急に良くなった」のような取引先からのタレコミはもちろん、「以前はなかった高級車が駐車場に常駐するようになった」などの無関係な人からのタレコミが入る可能性もあるのです。
そのような小さな情報であっても、詳細に調べられて調査に繋がるケースがあります。
内部告発をされる場合もある
取引先だけではなく、内部の従業員等から税務署に報告されるケースもあります。
経理担当者の「プライベートのゴルフ代を費用計上するように指示された」など告発や、上層部への不満が溜まった従業員から「過剰な接待が多すぎる」「上層部ばかりお金をもらっている」などといった報告がされるケースもあるのです。
脱税をするとペナルティはあるのか
脱税を行うと、罰則金や利息金などのペナルティが発生します。
それでは、具体的にどのようなペナルティがあるのでしょうか。
延滞税が発生する
脱税であっても申告漏れであっても、納期限までに適切な納付が無ければ「延滞税」が発生します。
具体的に延滞税はどのようなケースで発生し、どのくらいの額がかかるのでしょうか。
延滞税とは
「延滞税」とは税金が決められた期限までに納付されない場合に、法定納期限から納付日までの日数に応じて発生する利息的な意味合いを持つ税金です。
これは、脱税のような意図的な税金逃れの場合のみではなく、申告漏れのような悪意がない場合や、適切に申告は行ったが納付を行っていなかったという場合にも発生します。
延滞税の税率
延滞税の税率はその年によって変化します。
参考までに令和3年は、法定納期限から2ヵ月間のは「年2.5%」それ以降は「年8.8%」です。
例えば、「100万円を1ヵ月(30日)遅れて納付した」というケースの場合2,000円の延滞税が発生します。(100万円×年2.5%×30/365日≒2,054(100円未満切捨て))
加算税が付加される場合がある
また、延滞税だけではなく加算税が発生する場合もあります。
加算税は一種の制裁的な意味を持つ税金であり、延滞税とは別に発生します。
無申告加算税
「無申告加算税」は申告を行っていないケースに発生する加算税です。
例えば100万円を無申告だった際は17万5,000円の罰則が発生し、計117万5000円の納付が必要になるのです。((50×15%)+(50万円×20%)=17万5,000円)
しかし、申告していなかった全ての場合で発生するのではなく、正当な理由があり、期限後1ヵ月以内の申告であれば発生しません。
過少申告加算税
「過少申告加算税」とは、過少に申告を行った際に、本来の税額と実際に申告した税額の差額に課税される加算税です。
例えば、本来200万円の税額にも関わらず100万円で申告した際は、12万5,000円が罰則となり、計112万5000円を追加で納付する必要があるのです。((50万円×15%)+(50万円×10%)=12万5,000円)
しかし、税務署の調査の前に、自主的に修正申告を行った際は発生しません。
重加算税
「重加算税」とは、悪質な仮想隠蔽があった際に、無申告加算税及び、過少申告加算税に代えて課される加算税です。
加算税の中で一番重い罰則となっており「悪質な仮装隠蔽を行い100万円無申告であった」場合、40万円の罰則が発生し、計140万円もの納付を行う必要があるのです。(100万円×40%)
逮捕されるケースもある
悪質な脱税の場合、刑事事件として扱われて逮捕されるケースもあります。
通常の税務調査の場合、逮捕されるケースはまずありませんが、国税組織の査察官(いわゆるマルサ)が行う強制調査では、裁判所から令状が出ており、逮捕が可能となっています。
逮捕に至る明確な基準はありませんが、過去に脱税で逮捕されているケースのほとんどは数千万円から数億円の大規模な脱税となっています。
申告後に過少申告が判明したらどうすればよいのか
「申告後に過少申告になっていることが判明した」という場合は、再度正しい申告を行う必要があります。
申告の種類は期限後か期限内かで異なるため、2種類解説します。
修正申告を行う必要がある
期限後に再度行う場合の申告手続きを「修正申告」と言います。
通常の確定申告書に加えて、修正申告用の第5表の提出が必要であり、当初申告と修正申告の差額の税額に延滞税を加えた金額を納付する必要があります。
また、税務署から指摘を受けた際も同様に、この修正申告書を提出することとなり、当初申告との差額に加え、過少申告加算税と延滞税の納付を行います。
期限内での修正であれば訂正申告という手続きになる
確定申告の期限内に申告書の誤りが見つかり、申告期限までに再度申告を行う場合の手続きを「訂正申告」と言います。
訂正申告用の申告書は存在しません。
申告の際は、確定申告書の「確定」という部分の二重線等で削除し「訂正」に書き換えて申告を行いましょう。
こちらは期限内での申告となるため、延滞税等はかかりません。
当初申告と訂正申告の差額のみを納付しましょう。
「節税」のつもりが「脱税」になっていないか不安な場合どうすればよいか
自分では節税と思っているが本当は脱税ではないか不安だ、という方もいるでしょう。
自信を持って適切に申告するためにはどのようにしたらよいのでしょうか。
何が費用計上できるのかを正しく理解する
自信を持って適切な申告を行うためには、何が費用計上できるかについて、曖昧な知識ではなく、正しい知識を身に付ける必要があります。
法令を暗記する必要はありませんが、迷った際に正しい情報を探すことができるようにすると良いでしょう。
法令はもちろん、国税庁のHPにある「タックスアンサー」なども大変参考になります。
どうしても判断に迷ったら税理士に相談する
どうしても判断に迷った際は税務の専門家に相談しましょう。
税務署では、一般的な相談の場合電話上でも確認を行うことができます。
また、税理士事務所によっては無料相談を行っている場合もあるため、活用することも有効な手段です。
手間に感じる人もいるかもしれませんが、曖昧な知識のまま申告することが一番危険であるため、不明な点は確認を取った上で申告するようにしましょう。
誤っていた場合即座に対応する
自身の誤った知識のまま申告してしまった場合は即座に修正申告をするなどの対応を行いましょう。
対応が遅れれば遅れるほど、延滞税の負担が大きくなってしまいます。
また、それを放置していると税務署からの調査の対象となる場合まであります。
自分で自分の首を絞めないようにするためにも、誤りに気付いた際は早急に対応することを心がけましょう。
まとめ
「脱税」とは、納めるべき税金を、「不正な手段」を用いて「意図的に」逃れることを言い、「節税」や「申告漏れ」とは異なります。
脱税を行うと、「延滞税」や「加算税」など、通常より多くの税金を支払う必要があり、中には刑事事件として扱われ逮捕に繋がる事もあるのです。
そのため、申告漏れなどの自らの誤りに気付いた際は早急に「修正申告」もしくは「訂正申告」を行う必要があります。
自分自身が不安にならないようにするためにも、正しい知識を身に付け適正な申告を行うようにしましょう。