税務調査の対策について税務署の元税務職員が解説します
当記事では税務調査のための対策を詳しく記載しています。
この記事を読んで「自分は今何をするべきか」を正しく理解しましょう。
税務調査のために普段から対策しておくべきことは?
基本的に税務調査の際は事前に連絡が入ります。
しかし予告なしで税務署が来る「無予告調査」を受ける可能性もゼロではありません。
いざ調査となった時に不安にならないようにするため、普段から調査に備えていることが大切です。
正確な帳簿を作成する
まずは「企業会計原則」の「真実性の原則」を遵守しましょう。
真実性の原則とは、事業者は客観的な事実に基づいた事実の記帳を行わなければならないという原則です。
税務調査では様々な資料を確認しますが、帳簿の確認は必ず行われます。
客観的に見て、取引が正当でないとみなされると、調査の中で必ず指摘されてしまいます。
正しく記帳することが調査で指摘を受けないための大原則なのです。
また「後からまとめて記帳する」という考えだと、正しい記帳ができずに矛盾が生じる原因となります。
取引の度に記帳する習慣をつけましょう。
帳簿と証憑類は一緒に保存しておく
税務調査では帳簿と一緒に、帳簿を裏付ける証憑類も確認されます。
帳簿を正しく記載していても、裏付けの書類が無ければ指摘される原因となりかねません。
紛失のリスクも考えて、帳簿と裏付けとなる証憑類は一緒に保存しておきましょう。
また、証憑が帳簿と連動し、一部紛失した場合でもすぐに気付けるように、普段から日付順に整理していると尚良いでしょう。
過去の申告に誤りがあると気付いたら即座に対応する
正しく申告を行っているつもりであっても、後から見返した際に、知識不足や誤りによって過少に申告をしてしまっているケースがあります。
その様な場合は早急に修正申告などの正しい手続きを行いましょう。
過少に申告していると延滞税が発生し、ペナルティとして加算税の対象となる場合もあります。
調査前に自主的に申告することにより、延滞税が最低限に抑えられ、加算税の割合も減少します。
そのため、誤りに気付いたらそのままにせず、適切な対応をすることが非常に大切です。
税務署から調査の連絡があったら対策しておくべきことは?
通常、税務調査の対象となった場合は、事前に税務署から連絡が入ります。
ここでは税務署から連絡が入ってから税務調査の間までにするべき対策を解説します。
顧問税理士と綿密な打ち合わせを行う
もし自身に税務調査の連絡が来たらすぐに顧問税理士へ連絡を行います。
その際に税務署の職員から日程調節を求められる可能性がありますが、その場で回答はせずに税理士を通して回答をする旨を伝えましょう。
税理士を通して日程調節をすることによって、調査当日に税理士が立会えないというアクシデントが起こらなくなります。
その後は税理士の指示に従うようにしましょう。
税務調査対策をしてくれる税理士事務所を活用する
税理士の立会いなしで税務調査を受けることは可能なら避けるべきです。
納税者は調査に係る経験がほとんどないために、税務署の職員に言われるがままになってしまう傾向があるためです。
顧問税理士を雇っていない方でも、顧問契約なしでも調査時のサポートをしてくれる税理士事務所を利用しましょう。
必要書類の整理を行う
調査の当日までに必要書類の整理を行いましょう。
具体的には以下のような書類です。
- 帳簿全般
- 売上に係る資料(領収書,請求書等)
- 仕入や外注に係る資料(領収書,請求書等)
- 経費に係る資料(領収書等)
- 預貯金に係る資料(通帳等)
- 人件費に係る資料(出勤簿,源泉徴収簿,扶養控除申告書等)
- 会社概況に係る資料(社員名簿・組織図等)
- 税金に係る資料(過去の納付書等)
これらの資料を最低3期分、可能なら7期分を、求められたらすぐに出せるように準備しておきましょう。(調査は通常3期分です。問題が見つかった場合、5年もしくは7年となる場合があります。)
帳簿と証憑類が連動しているかを確認する
税務調査では帳簿と、それを裏付ける証憑類を一緒に確認されることが多いです。
証憑類が紛失しているだけで、帳簿の裏付けが出来ずに指摘されてしまう場合があります。
そのため、証憑類に不足はないか、帳簿と連動しているかを確認しましょう。
もし証憑類を紛失している場合は取引先に再発行を依頼する必要があります。
領収書など、基本的に再発行はできないものも、証明書を発行してもらえる場合があるため、必ず確認をしましょう。
取引先に確認をしても揃わなかった場合は、自身で「いつ」「どこに」「なぜ」使ったのかを詳細に記載して対処します。
これらを最低3期分、可能なら7期分行います。
不明な取引は残さない
自身で疑問が残る取引であるなら、税務署は必ず指摘します。
特に「交際費」「旅費交通費」は争点になる事が多いです。
食事代であれば「誰と」宿泊費であれば「誰が」「何のために」のように、詳細にメモを残しましょう。
自分自身で「これは○○の際の出費」と説明できるようにすることが大切です。
計上した根拠を説明できるようにする
個人事業主の場合、プライベートと共有する車や通信費、ガス電気代などを計上することも多いです。
プライベートで使用した費用は、根拠のある割合で按分した額を計上する必要があります。
その際に必ず「なぜこの割合で按分したのか」の根拠を説明できるようにしましょう。
例えば「ネット回線を使っている時間が1日10時間。内8時間は仕事で使っている。また、仕事は月25日行っている。」の場合は以下のように考えます。
例)(8/10(時間))×(25/30(日))≒0.67 のため67%を計上
税務調査の当日に気を付けるべきことは?
調査は概ね2日から3日間で行われることが多いです。
ここでは調査当日は何を気を付けるべきかを解説します。
調査の最初に行われる雑談では正しい情報を伝える
調査1日目の午前中は雑談も兼ねたヒアリングが行われます。
「詳しい事業内容」「会社設立時の話」のような事業に関係していることから「経営者の趣味」などの、一見調査に関係ないような話まで様々です。
雑談の中で、話に矛盾点があったり、違和感を与えないように注意しましょう。不用意になんでも話す必要はないため、話し方についても事前に税理士と相談できると良いでしょう。
質問を受けても曖昧な回答はしない
調査を受けていると想定外の質問をされることもあるでしょう。
もし即答できない場合は、素直に確認してから回答するようにしてください。
辻褄合わせの回答は後々矛盾に繋がる可能性があるため注意が必要です。
可能な限り調査に協力する
当日は、税務署の職員に無意味に対抗するのではなく、可能な限り調査に協力しましょう。
変に突っかかると「何か見られたくないものがあるのか」と思われてしまう可能性もあります。
また、税務署の職員も人間です。
調査に協力することによって税務職員の心象良くなり、調査がスムーズに進行します。
税務調査の後にするべきことは
調査結果は当日に伝えられるのではなく、後日改めて連絡が来ることが多いです。
税務調査が終わった後はどのような流れになるのでしょうか。
修正点がない場合は調査が終了する
指摘する箇所がなかった場合は、その段階で調査は終了になります。
これを一般的に「是認」と呼びます。
修正点がある場合は修正申告が必要です
調査の結果、問題点があった際の対応は「指導で済む場合」と「修正申告を求められる場合」に分かれます。
指導で済む場合は、これからの記帳の際に気を付けるようにしましょう。
もし、修正申告を求められた場合は、申告書の作成と差額の納付を行います。(この段階で修正申告の提出は義務ではありませんが、放置していると税務署が「決定」の手続きを行うため、ほとんどのケースでは修正申告の提出を行います。)
この際に延滞税及び過少申告加算税が発生する場合があるため、留意しましょう。
判断に迷ったら税理士に相談すべき
税務調査の流れに疑問があるなど、少しでも判断に迷う点がある場合、税理士に相談しましょう。
多くの人は税務調査に対して大きな不安を持っていますが、正しい知識と対策を知っていればそれほど怖いものではありません。
税務調査に向けて、適切な対策を行い、万全の状態で調査に臨みましょう。