FXで経費になる?ならない?FX確定申告の必要経費とは
FXの税金は、為替差益やスワップポイントの利益に直接かかるわけではありません。FX取引の利益から必要経費を差し引くことが認められています。FX取引に費やした経費は漏れなく計上して、税金の過払いをなくしましょう。この記事では、FXの税の計算で認められている必要経費について、詳しく解説します。
FX取引の必要経費とは
FX取引で利益を得るために費やした費用を経費にできます。経費として認められるには、客観的な証明が必要です。経費は毎年1月1日から12月31日に発生したもの(領収書の日付がその年の分のもの)を計上します。
経費により確定申告の要否が変わります
経費を計上して所得が下がることにより、確定申告が不要になる場合があります。FXの利益から経費を差し引いた結果がマイナスであれば、所得はゼロなので確定申告不要です。また、給与所得者など、FXを副業でおこなう場合、FXの利益から経費を差し引いた残りの金額が20万円以下ならば、確定申告不要です(市区町村の役所に住民税の申告は必要)。
経費を引いて赤字の場合
FXの利益から経費を引いて赤字の場合、確定申告は不要です。しかし、損失分を確定申告することで3年間繰り越せます(繰越控除という)。たとえば、今年FXの収益が10万円の赤字だった場合、あえて確定申告をしておきます。翌年のFXの所得が20万円であれば、繰越控除により10万円(20万円-10万円)の所得になるというわけです。赤字の年は確定申告をしなくても問題ありません。しかし、申告によって翌年以降の所得から控除(減算)でき、節税につながります。
確定申告時に経費を申告する
FXの確定申告を行う際にかかった経費の申告が必要です。国内FX の所得は「先物取引に係る雑所得等」に該当し、他の所得と分けて税金が計算されます(申告分離課税という)。先物取引に係る雑所得等の申告では、申告書に必要経費の明細を記載します。一方、海外FX の所得区分は、総合課税の雑所得です。こちらは明細を記入する欄はなく、経費の合計金額を申告用紙に記入します。
領収書は保管しておくこと
確定申告時に領収書の添付は不要ですが、経費の証明として保管が必要です。税務署は取引の収益について把握しています。利益が出ている人が申告しない場合、税務署から「お尋ね」文書が届く場合があります。そのようなケースではかかった経費の証拠が必要となります。
FX取引における必要経費の例
全額経費にできる費用とは
FXの経費には、全額を計上できるものと、一部を計上できるものがあります。ここでは、全額経費にできる費用を紹介します。
手数料
外貨の売買取引における取引手数料や、FX口座の入出金の手数料は全額をFXの必要経費にできます。ただし、取引手数料は無料の会社がほとんどです。
FXにおいて通貨の売値と買値の差額がスプレッドで、FX会社の手数料収入にあたります。しかし、スプレッドは取引ごとの損益に反映されているので、経費として差し引けません。
図書研究費
FXを勉強するための本や日本経済新聞などの購読料は、経費として認められます。新聞の中でも一般紙の経費計上は難しいでしょう。有料のFXに関するメルマガ、経済情報、経済指標のデータ、為替ニュース、アナリストの分析、情報商材、セミナー参加などの費用は、経費としての計上が可能です。
ソフトウェア代
FXでは、自動売買プログラムをなどのツールでトレードを行う方もいます。ソフトウェアの購入代や使用料は経費として認められます。また、24時間稼働のためのレンタルサーバー代の経費計上も可能です。
旅費交通費
来場型のFXセミナーに参加する場合、セミナー参加費だけでなく旅費・交通費も経費にできます。旅費・交通費には電車・バス・タクシー代、ホテルなどの宿泊費が該当します。また、FXのアドバイザーに相談した時の交通費も、利益を出すための費用に該当します。
交際費
セミナー参加後の懇親会の参加費や、トレーダー同士の情報交換のための会議室レンタル代なども経費として認められる可能性があります。ただし、FXと関連のない個人的な飲食は、経費にできません。
事務用品費
FXの取引記録のためのノートや筆記用具も経費になります。また、プリンターやコピー用紙、インクなどの購入代金も経費計上が可能です。
家賃、光熱費
FX取引のために専用の事務所などを借りているケースでは、家賃や電気代などの光熱費が経費として認められます。自身が住んでいる部屋の一室をFX専用に使用している場合は、プライベートとの利用割合で按分する必要があります。
通信費
FXのトレードで利用する通信費は、FXに使用した分のみ経費として認められます。FX専用の回線や、専用のスマホなどは全額経費算入が可能です。
パソコン、スマホ代
FX専用のパソコンやパソコンデスク、モニター、アクセサリ等の購入費用は他の用途に使っていなければ全額経費計上が可能です。また、必要性が明らかであれば複数台を使用していても経費として認められます。
一部を経費にできる費用とは
FX以外の用途でも使用しているパソコンや通信費は、FXに使用している比率に応じて按分した金額を計上することになります。FXに使用している比率は使用時間を記録し、根拠として提示できるようにしておきましょう。
FX取引のために使用している時間とは
FX取引のために使用している時間として認められるのは、FXの取引をしている時間だけではありません。FXに関する情報収集(本を読んだり、インターネットで調べたりする)や、FX会社の取引画面を表示して見ている時間は、FXのために使用している時間に該当します。FXに使用する按分割合の根拠とするためには、使用時間を詳細にメモしておきましょう。
※税務署に聞かれたときに、何故その按分割合にしたのかという合理的な説明ができれば問題ありません。
FXの経費に関わる減価償却とは
パソコンなど高額で長期にわたって使用する資産は、使用できる期間(耐用年数)に応じて購入代金を分割して費用に計上するルールになっています。この方法を「減価償却」といいます。
減価償却の計算方法
パソコンの減価償却の年数は、購入代金(1台あたり)によって以下のようになります。
- 10万円未満:消耗品として全額その年の経費にする
- 10万円以上20万円未満:購入代金を3年に分けて経費計上
- 20万円以上:購入代金を4年に分けて経費計上
なお、年の途中で購入したパソコンは月割りで減価償却を行います。
減価償却の計算例
減価償却の計算方法を、パソコン購入の例で確認してみましょう。前提条件は以下のとおりです。
- パソコンの購入代金は24万円
- 7月に購入
- パソコンのFX取引の使用割合は40%
減価償却費=24万円÷4年×(6カ月÷12カ月)×40%=1万2,000円
このパソコンを購入した年に経費にできるのは、1万2,000円というわけです。
FXの経費に関する注意点
FXの所得計算では幅広い費用が経費として認められることがわかりました。計上できる経費が多いほど、かかる税金を抑えることが可能です。負担した費用が確実に経費となるように、注意すべき点を解説します。
資料の保管方法
領収書はFXの経費を税務署に認めてもらうための証拠となるものです。確定申告時に領収書の添付は不要ですが、請求書や領収書や明細書なとの資料は必ず保管しましょう。
領収書の記載事項
領収書は原則として支払先に書いてもらわなければなりません。記載項目は以下のとおりです。
- 宛名
- 日付
- 金額
- 但し書き
宛名には個人名、事業で行う場合は開業届の事業主名を記入してもらいます。
但し書き欄は空欄の場合があり、それでも問題はありません。しかし、できるだけ「セミナー参加費」のように具体的な内容を書いてもらうようにしましょう。但し書きがないときは、領収書に何の支出なのかをメモしておきます。
領収書が再発行されない場合
領収書を紛失または破損・汚損してしまった場合、支払先が再発行してくれるとはかぎりません。その場合、支払いを銀行振り込みやクレジットカード払いにしていれば記録が残るため、経費の証明になります。また、出金伝票に記録しておき、税務署が支払先に確認できれば、経費として認められます。
資料の保管期限
経費計上した費用の領収書などの資料類は、白色申告で5年、青色申告で7年間保管しなければなりません。領収書類は税務署に届け出た場合、電子データの保管も可能です。
そもそも請求書や領収書が発行されない場合
FXにかかる費用を支払う際に領収書を発行してくれないケースもあります。領収書が発行されない場合、レシートを支払いの証明として使用することが可能です。レシートも発行されない場合、自身で用意した用紙に支払年月日、支払先、目的、金額を書いて残しておけば、経費計上が可能です。銀行の入出金明細やクレジットカードの明細も証拠として使用できます。
ネット上で支払った費用の証明
オンラインセミナーやダウンロード販売などインターネット上で取引したときは、確認メールや取引時の画面キャプチャ―が支払いの証明になります。保管期限までは削除しないようにしましょう。
SuicaなどICカードで支払った費用の証明
駅で切符を買うと領収書を発行してもらえますが、Suicaのような電子マネー支払いには領収書は発行されません。Suicaの場合は、駅の券売機やチャージ専用機から一定期間に限り、利用明細の印字が可能です。
まとめ
今回はFXの経費について解説しました。FXの経費には明確な規定がありませんが、FX取引に直接関係のある経費なら幅広く認められます。経費の証明には、領収書などの取引明細が必要です。減価償却に関する経費のことや、そもそも経費になるか、ならないか、判断が難しいものについては、自己判断せず、税理士に確認しましょう。