飲食店の税金対策と節税効果を解説します
飲食店経営における利益率は10%程度だと言われております。多大な手間と労力を費やして必死に稼いだ利益に対して税金がかかります。苦労して稼いだ利益を守るため、飲食店経営者の方が知っておくと心強い税金対策と節税効果を解説します。
飲食店の税金対策
飲食店に特化した税金対策と節税効果を解説します。税金対策は「消極的な対策」と「挑戦的な対策」の2種類に分けております。
消極的な税金対策
消極的な税金対策とは、青色申告のような支出を伴わない会計上の対策と、保険や年金サービスの掛金を全額経費にしておき、解約時に積立てた掛金が全額返ってくるような「低リスク」な対策です。
たとえば以下のような税金対策です。
- 青色申告
- 倒産防止共済(経営セーフティ共済)
- 小規模企業共済
青色申告の節税効果
個人事業主の方は既に対策済かと思いますが、青色申告は最大65万円の特別控除が可能になります。たとえば年間の所得が300万円の場合、この300万円から基礎控除48万円と青色申告特別控除65万円を差し引くことができます。通常300万円-48万円に対して所得税率が10%で所得税が154,500円かかります。一方で青色申告特別控除により所得を187万円まで圧縮することができ、所得税率が5%に下がり、所得税が93,500円まで下がります。つまり、年間61,000円の節税効果が得られます。
倒産防止共済の節税効果
倒産防止共済とは、企業の連鎖倒産を防止するために行政法人が事業者に提供する保険サービスです。本来の目的は、加入者の連鎖倒産を防止するため、いざというときに事業資金の借入が可能になるサービスです。倒産防止共済の特徴は、年間に最大240万円の掛金を一括で経費にできる点です。さらに掛金は40か月以降に解約すれば100%が返戻されるため、利益の繰延に有効活用できます。
小規模企業共済の節税効果
小規模企業共済とは、個人事業主や法人の役員が加入できる行政法人の年金積立サービスです。月の掛金を1,000円~7万円に設定でき、積み立てた掛金を所得控除にできる点が特徴です。デメリットは、20年未満で解約すると元本割れするため、長期的にお金が拘束されてしまう点です。
挑戦的な税金対策
挑戦的な税金対策とは、支出を伴う積極的な事業投資により売上の拡大を目指す対策や法人化して資産を増やすような対策です。
たとえば以下のような税金対策です。
- 設備投資
- 物品の購入(30万円未満の物品)
- メニュー開発
- 店舗展開に備える
- 法人化して退職金をもらう
設備投資の節税効果
設備投資とは、売上を上げるために経費として店舗の内装デザインや厨房機器を取り換えるような対策です。※減価償却に注意が必要です。
たとえば年間300万円の所得がある場合、 所得税+住民税で約30万円を納税します。一方で200万円を設備投資した場合、100万円の所得に対して所得税+住民税で5千円程度しか納税しません。※基礎控除48万円と青色申告特別控除65万円を考慮
つまり、単純計算すると、200万円の設備投資を行った結果、29万5千円の納税額が減るので、実質、約230万円を運用していることになり得ます。
以上のように、税金を納めるくらいなら自社の設備投資にお金を投資して納税額を減らす。という考え方です。
物品の購入による節税効果
青色申告を行う場合、30万円未満の物品の購入費を一括で経費に計上できます。上記の理屈と同じですが、300万円の所得に対して約30万円を納税するくらいなら、1個当たり30万円未満のノートPCやiPadなどの物品を200万円分を購入することで所得が100万円まで下がり、結果的に納税額が5千円まで下がります。設備投資に近い考え方ですが、盛り付け用のお皿や高価なグラスを購入して料理の単価を高く見せるような取り組みも可能です。
メニュー開発による節税効果
メニュー開発による税金対策とは、新規メニューを開発するために費やした食材の仕入れ費用や調理器具を研究開発費として経費に計上することで、看板メニューの再開発を行い売上を増加させる対策です。税金を多く納税するくらいなら、メニュー開発(研究開発費)に費用を費やし、メニューを作り直し、お客様満足度を高めることを優先する。という考え方です。
店舗展開による節税効果
店舗展開とは、文字通り2店舗目、3店舗目を新規出店する事業投資です。所得の増加に伴い納税額も増加します。納税するくらいなら、300万円くらいで始められる居抜き物件を契約してアグレッシブに店舗展開するような考え方です。人材調達も大変ですので、やみくもに出店するわけではありませんが、所得が〇〇〇万円増えたら〇〇エリアに店舗展開する。というような構想を事前に立てておき、優良物件の情報が入ってきた際に即行動に移せるように備えておくことが大切です。
法人化して退職金をもらう節税効果
個人事業主のままでは退職金を自身に払うことができません。ですが、法人化することで自身に退職金を支払うことが可能になります。退職金のメリットは、勤続年数に応じて是金の額が下がる点です。自身で設立した会社に20年務めた場合、20年×40万円=800万円を退職金から控除できます。たとえば、20年間務めた会社から800万円を退職金として自身に支払う場合、納税額は0円です。そのため、将来を見据えて、あえて法人化しておき、勤続年数を蓄積する。という考え方もあるのではないでしょうか。
飲食店の税金対策と節税効果まとめ
飲食店の税金対策は「消極的な税金対策」と「挑戦的な税金対策」の2つに分けて解説しました。
消極的な税金対策は、行政法人のサービスを経費で利用し、数年後に所得を手元に戻すような守りの節税対策です。
挑戦的な税金対策は、所得にかかる税金を事業投資に回すことで事業の拡大を加速させる攻めの節税対策です。
現状どちらが最適か、飲食店に強い税理士に相談することをおすすめします。