相続税の申告|期限・不要なケース・流れ・必要書類・納付を解説

「相続税の申告はいつまでにしなければならないのだろうか?」

「そもそも、自分は申告が必要なのだろうか?」

「申告期限までの流れを知りたい」

相続税の申告については、このようにさまざまな疑問が生じるのではないでしょうか。この記事では、相続税の申告について解説します。

相続税はいつまでに申告しなければならないのか

相続税を申告する必要がある場合、いつまでに申告手続きをしなければならないのでしょうか。

相続税の申告期限は10か月以内

相続税の申告をする必要がある場合、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内に、相続税の申告書を提出する必要があります。

例えば、1月10日に亡くなった場合はその年の11月10日となり、4月10日に亡くなった場合は翌年の2月10日が申告期限になります。

なお、提出期限が土日祝日にあたる場合は、その翌日が期限となります。

申告期限の延長は原則できない

相続税の申告期限延長は、原則できません。

申告期限まで1か月以内のタイミングで、遺産を引継ぐ人数や財産額に変動があった場合には、最大2か月の延長が認められるケースもあります。ただし、このように特殊なケースでない限り、申告期限の延長は認められません。

相続税の申告が不要かどうかを判断するには

遺産を相続しても、必ずしも相続税申告が必要になるとは限りません。では、どのような場合に申告が不要になるのでしょうか。

相続財産が基礎控除以下なら申告不要

相続税には、税額を計算するにあたって、税金の対象となる遺産総額から差し引くことができる「基礎控除」というものがあります。

相続した財産から基礎控除を差し引いた金額がゼロまたはマイナスになれば、相続税はかかりません。この場合、相続税の申告も不要です。

相続税の基礎控除とは

相続税の基礎控除は、相続財産から控除できる金額のことを指し、相続税の申告が不要かどうかの判断基準となります。

基礎控除は「3,000万円 +( 600万円 × 法定相続人の数 )」で求めます。

具体例

法定相続人が3人の場合

基礎控除額:4,800万円 (= 3,000万円+(600万円 × 3人 ))

法定相続人が5人の場合

基礎控除額:6,000万円 (= 3,000万円+(600万円 × 5人))

となります。

相続税の基礎控除は法定相続人の数によって変わります。法定相続人の数を正しく把握しないと、相続税の申告が必要か否の判断を間違えてしまう可能性もあるので十分に注意しましょう。

相続税がゼロでも申告が必要なケースがある

相続財産の総額が基礎控除以下のときは、相続税はかからず、申告の必要もありません。ただし、相続税がゼロになったとしても申告をしなければならないケースがあります。

相続税はゼロなのに申告が必要なケース

相続税には、基礎控除以外にも個人の事情に応じて税金を軽減できるさまざまな特例があります。

たとえば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、計算の結果、相続税が最終的にゼロになったとしても、相続税の申告が必要です。期限内に申告をしなかった場合、これらの控除が受けられなくなり、余分な税金を払うことになるので注意しましょう。

相続税の計算方法について詳しくは以下のページで解説しています。
[参考] 相続で遺産がいくらなら税金はかからない?相続税の計算方法と早見表

相続税申告までの流れ

相続税申告の手順や手続きは、遺産の内容によって大きく異なります。ここでは一般的な流れを紹介します。

3か月以内に行うこと

遺言書の有無を確認する

相続人が複数いる場合、遺産をどのような割合で分けるかは法律により示されています(これを「法定相続割合」といいます)。

ただし、遺言書がある場合は、法定相続割合よりも遺言書の内容が優先されます。

そのため、まずは遺言書の有無を確認しましょう。

相続財産や債務を調査する

相続税は被相続人が亡くなったときに保有していたすべての財産を対象として計算しますので、相続財産がどれくらいあるのかを確認します。

相続財産には、預貯金や有価証券、不動産などプラスの財産だけでなく、借金や未払金などマイナスの財産も含まれます。

法定相続人を確定させる

基礎控除を求めるためには法定相続人の数を把握しなければなりません。

被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を取り寄せて、誰が法定相続人となるのかを確定させます。

相続放棄または限定承認するかを決める

遺産がプラスの財産よりもマイナスの財産のほうが多かったり、マイナスの財産がどのくらいあるのか分からない場合は、「相続放棄」や「限定承認」を検討しましょう。

相続放棄や限定承認を選択する場合は、相続開始から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てをする必要があります。

4か月以内に行うこと

被相続人の所得税の準確定申告をする

被相続人に所得があった場合、亡くなった年の1月1日から亡くなった時点までの所得について所得税の確定申告が必要です。これを準確定申告といいます。相続開始を知った日の翌日から4か月以内に相続人が行います。

10か月以内に行うこと

相続財産や債務を確定する

被相続人のすべての財産を調査して相続財産を確定し、財産目録を作成します。

遺産分割協議書を作成する

財産目録を作成したら、誰がどの財産を相続するのかを話し合う「遺産分割協議」を行います。話し合った結果は「遺産分割協議書」という書面に表します。

この内容に基づき、不動産の名義変更や預金の解約などの手続きを行います。

相続税の申告と納付を行う

遺産分割協議が成立したら、相続税の申告書を作成して税務署に提出し、相続税の納付を行います。

「相続税申告書の提出」と「相続税の納付」は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に完了させる必要があります。

相続税の申告をしなかったらどうなる?申告漏れのペナルティは

相続税は、定められた期限までに、申告書や必要書類を税務署に提出する必要があります。

相続税の申告期限を過ぎたらどうなる?

申告期限内に申告をしなかった場合や、実際に相続した財産の額よりも少ない額で申告をした場合には、本来の相続税のほかにも税金がかかるので注意が必要です。

相続税の申告義務があるにもかかわらず期限までに申告をしなかった場合は、「無申告加算税」と「延滞税」が加算されます。

また、各種特例や税額控除も適用できなくなります。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は税金の減額割合が大きいため、これらが適用できなくなると、税負担が大きく増えてしまいます。

遺産分割協議が終わらない場合

申告期限までに相続税の申告と納付を済ませたいと思っていても、遺産分割(誰にどう財産を分けるのか)が確定しないと、最終的な相続税の金額を計算できません。

しかし、遺産分割協議が終わっていない場合であっても申告期限の延長は認められません。そのため、相続財産の分割協議が成立していないときは、法定相続割合により財産を取得したものとして相続税の計算をし、申告と納税を行います。

後日、正式に遺産分割協議が終わったら、実際に取得した相続税の課税価格にしたがって計算して申告し直すことになります。

相続税の申告手続きに必要な書類

相続税を申告する際には、申告書のほかに、次のような添付書類が必要になります。

必ず提出するもの

  • 戸籍謄本
  • 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
  • 相続人全員の印鑑証明書

相続財産の内容によるものの一例

  • 預貯金や借入金などの残高証明書
  • 生命保険金や死亡退職金の支払証明書
  • 不動産の登記事項証明書
  • 固定資産税評価証明書
  • 上場株式の残高証明書

申告書の提出先

相続税の申告書は、被相続人の死亡のときにおける住所が日本国内にある場合、被相続人の住所地を所轄する税務署へ提出します。財産を取得した人(相続人)の住所地を所轄する税務署ではありません。

相続税の納付はどのように行うのか

相続税の納付は、申告と同様に相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。

相続税は金銭一括納付が原則

税金は金銭で一度に全額を納めることが原則となっています。

銀行や郵便局などの金融機関、または所轄の税務署の窓口で納付します。そのほか、インターネットを利用して納付する電子納税(e-Tax)での納付も可能です。

金銭一括納付が難しい場合は延納や物納を利用する

相続した財産が不動産や株式ばかりで換金しづらく、相続税を金銭で一度に納めることが難しい場合も少なくありません。

そこで、金銭一括納付が困難な場合に、一定の要件を満たしていれば、何年かにわけて納める「延納」や、相続した財産そのものを税金の代わりに納める「物納」という方法もございます。

これらの制度を利用する場合には、相続税の申告期限までに税務署に申請書を提出して許可を受ける必要があります。

相続したら翌年の住民税はどうなるのか?

相続で高額なお金が手元に入ってきたら、翌年の住民税は増えるのでしょうか?

相続しても相続人の住民税は増えない

住民税は所得に対して課税されるものです。相続は財産の移転であって所得ではないので、相続財産を相続しただけでは住民税はかかりません。

ただし、相続した不動産から賃貸収入を得た場合など、相続後にその財産から所得が発生したときはその所得に対して住民税がかかります。

亡くなった人の住民税は払わなければならない

住民税は、1月1日から12月31日までの所得に対して、翌年に納税するという仕組みになっています。

そのため、被相続人に所得があった場合、相続人が翌年に納税することになります。亡くなっても免除されるわけではないので、必ず納税しましょう。

なお、被相続人の未納分の住民税は、相続税を計算する際に遺産総額から差し引くことができます。

相続税の申告まとめ

相続税の申告は自分でもできますが、10ヶ月以内という短期間のうちに必要事項を確認し、書類を作成しなければいけません。

自分で相続税申告をするためには、専門的な知識が必要になります。申告に不安を感じる方は、税理士に相談されることをおすすめします。

ZEY株式会社 税務部門監修

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