個人事業主の資格取得費用は経費になる?税理士が解説する

個人事業主の資格取得費用は経費にできる?

個人事業主の必要経費として認められるためには、事業の遂行上必要な支出でなければなりません。
資格取得費用についても、業務を行うために直接必要な資格や技能を取得するためであれば必要経費となります
このことを定めた所得税基本通達37-24にも、以下のように規定されています。

業務を営む者又はその使用人(業務を営む者の親族でその業務に従事しているものを含む。)が当該業務の遂行に直接必要な技能又は知識の習得又は研修等を受けるために要する費用の額は、当該習得又は研修等のために通常必要とされるものに限り、必要経費に算入する。

所得税基本通達37-24

学習コストが経費に認められなかった判例

事例

国税不服審判所は、個人事業者の学習コストについて、どのように判断を下しているのでしょうか。


個人の歯科医師が、英会話の研修費を必要経費として計上した事例があります(平13.3.30裁決)
納税者は歯周病の専門医や研究者として活動しており、英会話能力の保持は、業務遂行のために不可欠なものと考えて、経費としたものです。
しかし国税不服審判所は、英会話能力を保持することが歯科診療の業務上、必要不可欠とまでいえず、実際に診療において英会話を要する場面は直近3年間で1度のみであることから、経費とはならないと判断しました

傾向と対策について

個人事業主の経費として算入するためには、業務の遂行上直接必要な経費であることが求められます。
先ほどの事例では、歯科医師が研究者として活動し、あるいは来日した米国人の治療を行うために必要な経費であると説明していました。
しかし、実際には外国人患者の診療を行うことはほとんどなく、業務の遂行上直接必要とはいえないと判断したのです。
一方で、国税不服審判所も英会話が業務との関連性があることは認めましたが、それでも経費になることは否定しました

つまり、学習コストが事業の売上になっている証拠を客観的に証明する必要があります。

税務署側は税金を増やしたい立場なので、事業者が費やした学習コスト(経費)に対して課税対象の売上があればいい、という解釈もできます。

英会話教室や動画学習の費用は経費にできる?できない?

英会話スクールは経費になる?

英会話スクールに通う際の費用は、先に紹介した歯科医師の事例で経費にすることができなかった費用です。
ただ、その経費が事業に直接必要なものであれば、必要経費とすることはできます。
英語を使って海外の取引先と商談を行う必要がある場合や、海外の顧客に対する売上がある場合などは、英会話スクールに通う費用を経費とすることができます。

一方で、英語が事業のために直接必要とないえない場合は、経費となりません。
仕事で海外に行くかもしれない、という程度の必要性では、経費に認められません。

プログラミングスクールは経費になる?

プログラミングスクールに通う費用が経費として認められるためには、事業でプログラミングの知識を利用する必要があります。
システムの開発やホームページの作成などの事業を行い、収入を得ている場合には、当然経費とすることが認められます。
ただし、自分でホームページを作成する程度であれば、プログラミングスクールに通う必要はないと思われます。
そのため、プログラミングの知識を事業に直接利用しない場合は、関連性は認められても経費にすることは難しいかもしれません。

大学、専門学校は経費になる?

大学や専門学校に通う際の学費についても、経費として計上できる場合があります。
ただし、大学に通うための入学金や授業料については、事業とは関係なく個人として行う消費であると考えられているため、経費とすることはできません。そのため、医者の子供が医者になるために通う大学の学費は経費になりません。


経費とすることができるのは、直接事業に影響があるものに限られます。
専門学校で専門的な技術や知識を身につけ、その技能を活かした事業を行っているのであれば、必要経費となるのです。

自動車免許教習所は経費になる?

自動車を事業のために直接使うのであれば、経費となります。
自動車を使って顧客を訪問し売上を計上する場合や、仕入の際に自動車で商品を運ぶ場合など、自動車を使って事業を行う多くのケースが考えられます。
ただし、自宅から事務所や店舗への通勤だけに自動車を使う場合は、運転免許証を取得するための費用が経費になりません。

パソコン教室は経費になる?

パソコンの使い方を学び、そのスキルを事業展開に活かしているのであれば、経費となります。
パソコンを使ってお店や事務所に貼りだす文書を作成したり、社内で使うデータを管理する、仕入先や取引先の会社と、メールで情報のやり取りを行う、ホームページを作成したり、SNSを利用したりして広告宣伝を行ったなどの証拠が必要です。

簿記会計資格取得の学費は経費になる?

個人事業主として事業を行う人は、簿記や会計に関する知識がまったくないと不安に感じるものです。
そこで、仕訳の方法を勉強し、簿記などの資格を取得するために、学校に通う場合があります。
この時に支払う学校の費用については、事業を行うために支払った費用と考えられるため、経費とすることができます。

学習に必要な教材費は経費になる?

学習する際に使う教材の費用についても、業務上直接必要な技能や知識を得るために必要なものであれば、経費とすることができます。
経費になるものとしてご紹介した、英会話スクールやパソコン教室などを利用する際に、学校に支払ったものだけでなく個人的に購入したものであっても経費となります。
ただし、同じ内容の支出であっても、事業のために直接必要と認められない場合は経費になりません。

学習にかかる交通費は経費になる?

学校や教室に通うために支払う交通費についても、業務上直接必要な技能や資格などを取得するためのものであれば、経費となります。
ただし、その学校に通う必要性がない場合や、合理的な通学方法でない場合には、交通費として認められない可能性があります。
たとえば、電車で通えるのにタクシーで通ったなどの経費は否認されやすいです。

紙やデジタル書籍の費用は経費になる?

事業を行うため必要な知識を調べるために、書籍を購入することがあります。
このような書籍の購入費については、その知識を実際に業務に利用しているのであれば、経費とすることができます。

書籍の購入にかかる交通費は経費になる?

事業に必要な書籍を購入するためだけに出かけた場合、交通費を経費にできます。
ただし、書籍を購入する以外にプライベートな用事や買い物をする場合、交通費の全額を経費とすることはできません。

資格取得や学習コストの経費まとめ

個人事業主やフリーランスの資格取得やが英会話やパソコン教室等の学習コストを経費にするには、事業の売上に対する客観的な証明が必要です。

自分の事業領域に必要な学費を経費にする!と決めても、後々否認される可能性が高くなるので、自身の判断を実行する前に、客観的に大丈夫か、税理士に確認することをおすすめします

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