不動産投資の確定申告やり方・必要書類・節税対策について
不動産投資に必要な確定申告とは?
不動産投資の確定申告とは、不動産所得(賃貸収入-経費)を計算し、翌年3月15日までに申告書類を税務署に提出して、納税する作業をいいます。
確定申告の方法には青色申告と白色申告の2種類があります。
なお、青色申告を行う場合には、原則としてその年3月15日までに青色申告承認申請書を提出し、承認を受けることが必要です。
不動産投資で確定申告が必要な人
確定申告の有無を見極めるポイントは不動産所得の金額です。
年間に不動産所得をいくら稼いだか、によって申告義務が発生します。
不動産所得とは、家賃収入から経費を引いた「利益」を意味します。
不動産所得が年間48万円以上
不動産業が本業の方は、所得の合計額が48円を超える場合、確定申告が必要です。
副業所得が年間20万円以上
不動産投資が副業の方は不動産所得が20万円以上で確定申告が必要です。
サラリーマンの方は、副業所得が20万円以下であっても、給料を複数(2か所以上)の会社から受け取ったり、年収が2,000万円を超える場合、確定申告が必要です。
年金収入が400万円を超える場合
年金受給者の方は、公的年金等以外の所得金額が20万円以下であっても、年金等の収入が400万円を超える場合には、確定申告がです。
不動産投資向け確定申告のやり方
家賃収入から不動産所得を計算して、税務署へ提出する流れを解説します。
不動産投資の確定申告に必要な書類を準備する
白色申告の場合
- 収入金額や必要経費を記載した帳簿
- 業務に関して作成した上記以外の帳簿
- 収支内訳書
青色申告の場合
- 簡易帳簿(10万円の控除を受ける場合)
- 複式簿記により記帳した帳簿(55万円又は65万円の控除を受ける場合)
- 損益計算書
- 貸借対照表
白色申告、青色申告に共通する書類
- 経費関連の書類
- 売買契約書
- 賃貸借契約書
- 送金明細
- 売渡精算書
- 借入返済表
- 固定資産税通知書
- 火災(地震)保険料・管理費・修繕積立金等の領収書
- 確定申告書B
- 源泉徴収票・控除証明書など
不動産所得を正しく計算する
不動産所得は家賃収入から経費を引いた金額です。この不動産所得に対して支払う税金の大小が決まりますので、費やした経費など、正しく計上することが必要です。
経費や費用になるもの
- 固定資産税
- 減価償却費
- 借入金利子
- 管理費
- 接待交際費
- 修繕維持費
- 旅費交通費
- 不動産取得税
- 通信費
経費や費用にならないもの
- プライベートな食費
- 不動産業に関わらない自家用車の費用
- 不動産業に関わらない接待交際費
- 所得税
- 住民税
確定申告用の申告書類を作成する
税務署で作成する方法
税務署員に直接質問をしたり作成方法を指導してもらえるため、安心感がありますが「どうすれば節税になるか」ということについては一切教えてもらえません。
そのため必要以上に高い税額で申告・納税してしまう可能性があります。
インターネット会計ソフトで作成する方法
クラウド会計ソフトはインターネット環境があればパソコンでもスマートフォンでも入力ができ、決算書や申告書の作成まで会計ソフトが指示してくれるので便利です。
しかし、ある程度の知識がないと完成した決算書や申告書の間違いに気づけないといった欠点があります。
税理士に委託する方法
専門家である税理士に委託すれば、期限内に節税対策も加味された適正な決算書や申告書を作成してもらうことができ、個人にとっては煩雑なe-Taxによる提出にも対応が可能なため、簡単に申告可能です。
しかしある程度の報酬の支払が必要となります。
申告書類を提出して納税する
申告書類の提出方法としては、主に書類を印刷して税務署に持参もしくは郵送する方法と、電子証明書を使ってe-Taxによりデータを送信する方法があります。
また納税方法としては、紙の納付書に税額を記入して金融機関の窓口で納付する方法のほか、ダイレクト納付(事前の届出が必要です)やインターネットバンキング、Pay-easy(ペイジー)対応のATMなどで納付する方法があります。
確定申告の経費や計算を間違った場合
万が一経費や税額の計算を間違った場合でも、専門家である税理士に任せれば速やかに適正な修正申告を行います。
また税務調査の際には現場に立ち会ってもらったり、税務署との交渉においても代理人として話を進めてもらえます。
一般の人にとって税務署は敷居の高い場所であり、税務調査には不安を感じるかもしれません。
そういった方においては、申告書の提出のみならず税務調査においても納税者側に立って対応してくれる税理士という存在は、心強い味方となることでしょう。
不動産投資向け確定申告の節税対策【青色申告など】
不動産投資で稼いだ税引き後のキャッシュを増やす税金対策をご紹介します。
青色申告して所得を減らす
青色申告を行うと、特典として不動産所得の金額から10万円・55万円又は65万円を控除することができます。
簡易帳簿の場合の控除額は10万円ですが、複式簿記により帳簿書類を作成すれば、事業的規模(5棟10室)に限り55万円の控除を受けることができます。
さらにe-Taxにより確定申告書や損益計算書・貸借対照表等の提出を行えば65万円の控除を受けることが可能です。
不動産会社を設立して法人化する
法人化のタイミングとして有効なのは給与所得が695万円を超えるタイミングです。
これは給与所得が695万円を超えると所得税と住民税の税率は約33%になるのに対し、法人税の実効税率は約33.5%となりますが、中小法人の場合は特例税率が適用され、(法人の年間所得が800万円以下の場合を想定した)実効税率は約23.1%まで下がります。
また法人では経費にできる範囲が個人よりも広く、家族を役員にして役員報酬を支払うこともでき、赤字になった場合でも赤字(欠損金)の金額を最長10年間繰越すことができるメリットもあります。
家族を専従者にしてキャッシュを増やす
事業的規模かつ青色申告であれば、同一生計の家族に支払った給与を全額経費とすることができます。
白色申告の場合は、青色申告とは異なり家族に支払った給与を最大86万円まで所得から控除できます。
※白色申告の事業専従者控除の特例および青色事業専従者給与の特例を適用した場合、配偶者控除および扶養控除を適用できなくなるデメリットがあります。
不動産投資の赤字を損益通算できる
思ったように賃貸収入が上がらなかったり、減価償却費や大規模修繕などの支出により不動産所得が赤字となる場合があります。
この場合には不動産所得の赤字を他の所得の合計額から差し引くこと(これを損益通算といいます)ができます。
損益通算により課税所得が下がるので、給与所得から引かれた所得税の一部が個人の口座へ戻ってきます。
青色申告を行う場合、不動産所得の赤字が他の所得から引ききれずに残ってしまう場合、その残った金額を3年間繰越すことが可能です。
不動産投資の確定申告まとめ
不動産投資が本業の方は不動産所得が48万円以上で確定申告が必要です。
不動産投資が副業の方は不動産所得が20万円以上で確定申告が必要です。
不動産所得の計算を誤ると、必要以上に税金を支払うことになりますので、特に所得が高い方は法人化を視野にいれて、一度税理士に相談しましょう。